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Be praying. Be praying. Be praying.
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 紅蓮の胸元に額を押し付けたまま、勾陣はためらいの空気を纏うばかりで、世界から言葉が忘れ去られてしまったかのように、ふたりには静寂が降り積もっていた。どくどくと紅蓮の心臓が鳴る。それは決してめでたい類のものではなくて、香る程度に薄めた焦燥と恐怖の入り混じったものだった。彼はただゆっくりと肉の薄い背を撫でた。普段強がるばかりの彼女の弱気は意外なほどに、またある意味では当然のように重くて、この二本の腕で受け止めきれるか少しだけ不安を喚起させたけれど、受け止めなければならななかった。それは紅蓮の心のためにも。
 さらけ出すことの恐怖を、紅蓮もまた知っている。だからこそ待っている。言いたくないなら言わないままでも構わなかった。どんな経過をたどろうと勾陣の心が軽くなってくれるのならば充分だった。
 騰蛇。
 かけそく、しかしこんな時でも震えない声が彼を呼ぶ。紅蓮は努めて至上の微笑みを口の端と目元に浮かべた。それに見合うだけの声を絞り出す。「…どうした?」あやしていた手を少しだけ動かして、綺麗な黒髪の先を遊んだ。
 耳が拾ったのは声ではなかった。声よりも弱い、空気の震えに近かった。そしてそれは同時に剥き出しの彼女でもあった。彼女が曝け出すことを恐れ、今初めて外に出て紅蓮に見つかった、彼女のもっとも、普段の強さの分だけ、脆い部分。
「--……くるしい、よ」
 それを壊さないためには、紅蓮の言葉は足りなかった。だからただ頷いて、もう少し力を込めて抱き寄せる。そうするしか思いつかなかった。けれど紅蓮が辛いとき、楽にさせてくれるのは勾陣の、言葉ではなくて温度だった。だから、同じであれ、と願う。
 もう一度だけ、くるしい、と勾陣は言った。紅蓮はその背を丁寧にあやしながら、同じように、吐息のように、そうか、とだけ、言った。







キャラ崩壊自覚してるもの書くのって結構凄絶にMプレイだと思うわけですよってことで寝る!
私の頭の中いっつもこんなんだぜ!そして残念な大学生が出来上がっているのですまる

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だからそのまま突き進むしかなかった。



天后一人語りっつーか微妙に青后っつーか。
紅蓮を嫌いだってことでちょっと一部で好かれてなさげな子だけど何よりその部分が天后の魅力だと思うんでそこクローズアップしてみたらなんかひどいことになった気がする。

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 優しくしてきたつもりだった。
 いや、真実彼は彼女に優しかった。あらん限りに慈しみ、時には重たいほどの心配を注ぎ、望みを叶え、言葉を受け止め、寄り添っては彼女の心を尊重し、とにかく彼はそのようにしてひたすらに彼女を愛した。ふわふわと温かく砂糖菓子よりは甘すぎない彼の愛は彼女を喜ばせ、満足させ、そして彼に彼女の微笑みと愛という十分すぎるほどの対価をも与えたのだった。けれどもどこまでも友情に近い彼と彼女の関係性はそのような愛を適度に薄く白いもやに覆い隠して、彼と彼女は二人とももやの向こうでとくとくと脈打つそれに表面上は気づかぬふりをしながら安穏な愛を気まぐれに紡いでいた。そしてそれは未来永劫同じように安穏に永久機関的な愛を紡いでいくはずだった。
 そのはずが。
 何を間違えたのか彼は知らない。彼女はさらに知るわけもない。
 彼は手負いの獣であった。彼は孤独な獣であった。鋭利な爪と牙をもちながら自らのそれでいつしかぼろぼろになって横たわり一人哭いていた獣であった。獣は獣とみなが遠巻きにした中でじくじくと痛むその背を撫ぜた白い手にいつしか獣は彼となり彼は恋情を大きく含む愛を知りその手に彼女に捧げてきたのだった。
 彼は彼女に優しかった。それは従順とも言えた。ひとつひとつの場面を微視的に見れば彼はたびたび彼女に逆らい食らいついていたが、全体を巨視的に見れば最終的に彼は彼女の望みをほとんどそのまま受け入れていた。彼はそのことに文句をぶちぶちと並べたてつつも不満を蓄えることはなくひとつの均衡を織りなして長い時が過ぎた。そして彼女は忘れたのだ。彼女がその手を差し伸べたのは愛玩動物ではなく獣であり、牙も爪も宿したままで、手負いの傷は流れる時に任せて何事もなければ痛むこともなくなり、そして彼の本質もまた従者ではなくどうしようもなく獣であった。最後の一つだけは、彼女の称賛されるべき観察眼をもってしても彼女のあずかり知らぬところでもあった。

 生命を感じさせない無機質な異界の大地に片腕一本で縫い付けた細い体は身じろぎ抵抗を見せながらも紅蓮を跳ね除けない。いや、そう言ったら怒られるだろうか、正しく言えば跳ね除けることができない。差し入れた彼の指がその場所を刺激するだけで、懸命に力の籠る肩は慄くようにぴくりと跳ね、潤み溶けながらも紅蓮を睨む双眸は瞼に隠され、怒りの色で彼の名を呼ぼうとした声は艶やかな嬌声となって押し殺される。そのさまが紅蓮には不思議でならなかった。そしていついかなる時も強く凛と涼やかに在る彼女がこの腕の中で、その意志など関係なく、どうしようもなく女になることが愉しくてたまらなかった。
 ひとつだけ卑怯な言い訳をしていいのなら、彼はそれでも彼女に優しかった。傷つけないように、少しでも彼女が傷つかないように、普段通りに彼女の心に寄り添い、理解し、尊重しているつもりだった。けれど、もし勾陣が本当に拒絶したとしても、この手が緩むことはないだろうなと漠然と思っていた。だからこれは言い分けにすらならないただの卑怯な臆病でしかなかった。
 とうだ、と吐息のような声が苦しげに呼んだ。痛みのかけらも憶えないまま、紅蓮は唇を押し付けてどうしてと続く言葉を奪い食らった。
 そのまま呟く。
「いいだろう」
 本意を掴み損ねた瞳が、もっとも理解できていたはずの男を理解できない恐れを奥にひた隠しながら、尋ねるように金の視線を絡め取る。力を抜いてふうと笑い、瞼に唇を押し付けて、再びその場所をえぐった。すがる場所を求めて動く彼女の両腕をなおも拘束したまま、唇を滑らせて首筋に噛みつく。
 優しくしてきた。それは紅蓮の望んだことだった。優しくしてきた。そうすると勾陣は満足げに笑った。けれどその裏でいつも獣が吠えていた。手に入っていながら、この女が欲しいと、哭いていた。
 優しくしてきた。
 だから。

「一回くらい、壊したって、いいだろう」

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 細いな、と、たまに、話題に尽きたときに紅蓮は勾陣の腕に目を落として言う。不思議そうに眺めてからちょっと笑って、そしてまた、細いな、と繰り返す。男の本意は勾陣にはわからない。意図しての発言なら読むのはたやすいが、おそらく無意識に呟かれたであろう言葉にはそもそも読むべき裏がないのだった。
 そして彼女はいつも曖昧に「何を言っているんだ」と受け流す。紅蓮は深追いはしてこない。反撃されてまずいことでもあるのか深追いするほど重要なことでもないのか。どちらにせよ忌々しい。普段ならそんなささくれの尻尾の影すら見せることなく微笑の仮面を張り付けてやりすごす。ただ、いまはそんな気分ではなかった。なぜだか知らない、ささくれは普段よりずっと荒く無視しがたかった。ちくちくと。純粋な不快感。
 だから言った。
「いらないよ、こんなもの」

 こんな細腕では足りないのだ。何もかも足りない。護るにも支えるにも掴むにも奪うにも壊すにも、全然足りない。
 もっと力があればたとえばこの男を奪われた挙句にみすみす死なせるような真似もしなくてよかっただろうに。また彼が何一つ躊躇いなく前を見据えて歩かせてやることができるかもしれない。何一つ心配することもなく過去の痛みに引きずられることもなく。
 あるいはそんな抽象的な仮定ではなくて、もしもっと力があったなら、男のような腕力があったなら、たったいま、隣でのんきなことを言ったこの男を――どうしようもなく焦がれ愛してやまないこの男を――押さえつけて拘束して、彼女の望む言葉を吐かせるまで――そんなことも、可能だろうに。奪うことに抵抗はなかった。勾陣がそれをしないのは、実際問題不可能だからだ。押し倒すことはできるだろう。けれど押さえつけることはできない。たやすくふり払われてしまう。それは勾陣が通力で紅蓮にかなうことのないのと同じように絶対的な永劫の差だ。しかし可能ならば躊躇いなく奪った。それほどまでに膨れ上がった心は、もうどうしようもないところまできている。そのくせ逃げ場のある状態で彼の手を掴む勇気すらない。
 そしてこの手は、自分の恋を壊すことすらできないのだ。
 ただ待っている。空いた手。何もできない手。腕。彼が差し伸べてくれる手を待っている。その日をただずっと待っている。
 白く細くしなやかな。
 それが何だというのだ。
 たったそれだけの役立たずな腕は、だからいっそのこと、いらないのだ。

 とたんに男は慌てた風になった。予期せぬ応えとらしくない彼女の様子に狼狽を隠そうともせず腰を浮かす。浮かして、どうするでもなく、そのまま、少しだけ身を乗り出しているけれど勾陣に触れてくることはなく、言葉と行動を探して見つからずにあわあわしていた。勾陣のたったひとことでこの男がここまで反応することが愉快だった。好いた男が自分のせいで自分のために心を自分に向けることはそれがどんなかたちをとっていようと倒錯した充足感を与えるのだった。
 少し笑った。唇だけを震わせる。
 ざまあみろ。
 それがどんな意味を持って空気を震わせたのか、勾陣自身も分からなかった。









何を書いているのか よく わからない (ぇー)

ただこの二人は男女逆転してたら何もかも簡単にすらすら進むような気がしてならない

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 女の声がする。
 それは凛と穏やかにそして艶やかに。時に笑みを乗せ時に悲しみの色を時に呆れを含み時に怒りを宿し時に慄くほどの愛情そのものとして、いつしか紅蓮の耳に満腔に心の臓にやがては魂に馴染んだ。

 ――騰蛇。

 彼の名だ。紅蓮の真の名。彼という個を表すよりも彼の魂を表す性質を強く持つ。確かに誰かに必要とされるものではなく、むしろその逆、畏怖と恐驚ゆえに遠巻きに忌み嫌われただひとりで時間を食いつぶし訪れることのない終焉をただじっと待っていた、他者と関わることもなく、関われば相手を傷つけ壊す以外の未来を持たない、何一つとして存在意義を見いだせぬ存在としての名である。いっそ笑えるほど哀れなことに、自身にさえも忌み嫌われていた。否、今なお、彼は『騰蛇』である己を時に否定する。騰蛇の力が彼の大切な物を守る際に有用であり続ければ良いのだが、残念、そして皮肉なことに、騰蛇の強大な力は壊すには十二分であるのに守るにはまったくもって足りないのだ。
 だから要らないのだ。『騰蛇』など。

 ――あの声が呼んでくれないのなら。

 あの声が呼ぶ。騰蛇。応える。時に呼びかける。勾。その一瞬だけ紅蓮は『騰蛇』を許せた。あの声だけだ。あの声だけが、彼女だけが、彼の生と同様に彼の名の意味を持っている。








他の小ネタにくっつけて短編に組み込もうと思ってたけどむりっぽいからここに。

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スマイルは注文できませんでした……orz

というわけでざっかざっかと荒削りですが。
姐さんはいい具合に生意気だからさ。そして紅蓮はやるときはやれるへたれだからさ。

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若菜から天后へ。
はじめて若菜書いて相手が天后かよ! とは我ながら思う。

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アイソトープ:同位体。同じ原子番号を持つ元素の原子において、原子核の中性子(つまりその原子の質量数)が異なる核種の関係、あるいは核種である。
Wikipediaより引用。



ちょこちょこと書き進めて行ってたら長さが日記小話のレベルを余裕で超えました。まぁめんどいのでこっちでいいや、ということで。
アイソトープという言葉に出会ったとき浮かんだのは十二神将の生死のサイクルなんですが、どうにも話がずれた感がしてなりません。


R-15です。
事後だろうが事前だろうがあんまりはっきり描写してなけりゃ最中だろうがほっといてる私がつけるR指定なんで、まぁつまりそう言うことです。後半注意。前半健全。
普段のシリアスにをえろで和えてプラトニック風な雰囲気で仕上げたらわけわかんないことになりました。

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最近荒ぶってる某Kさんのせいで紅蓮が本気で可哀想になってきたので救済的SS。結局へたれだけど。いいじゃないへたれだって。幸せなんだもの。
いやでもこれ勾紅ですね。フォローのしようがなく勾紅ですよね。結局ごめん紅蓮。でも最後は文句なしでいい思いだから許せ! というか私の描く勾紅ってこのオチしかないよね!

それにしても日本語でおkな文章な上にキャラ崩壊上等である。まぁいいけどね、書いてる本人楽しいし。

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「より高い能力の後継ぎ」を必要とする安倍家にとって一夫一妻の慣習って物凄い非効率じゃなかろうか。
というかそんな背景があるなら安倍家こそ一夫多妻であるべきな気がする。

とある恋の犠牲になろうとしている、自分の恋のために他人を犠牲にした者の話。昌彰。
「夕べの花と散り急げ」ネタバレを含みます。

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碧波 琉(あおば りゅう)
少年陰陽師・紅勾を中心に絶えず何かしら萌えor燃えている学生。
楽観主義者。突っ込み役。言葉選ばなさに定評がある。
ひとつに熱中すると他の事が目に入らない手につかない。

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