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Be praying. Be praying. Be praying.
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 細いな、と、たまに、話題に尽きたときに紅蓮は勾陣の腕に目を落として言う。不思議そうに眺めてからちょっと笑って、そしてまた、細いな、と繰り返す。男の本意は勾陣にはわからない。意図しての発言なら読むのはたやすいが、おそらく無意識に呟かれたであろう言葉にはそもそも読むべき裏がないのだった。
 そして彼女はいつも曖昧に「何を言っているんだ」と受け流す。紅蓮は深追いはしてこない。反撃されてまずいことでもあるのか深追いするほど重要なことでもないのか。どちらにせよ忌々しい。普段ならそんなささくれの尻尾の影すら見せることなく微笑の仮面を張り付けてやりすごす。ただ、いまはそんな気分ではなかった。なぜだか知らない、ささくれは普段よりずっと荒く無視しがたかった。ちくちくと。純粋な不快感。
 だから言った。
「いらないよ、こんなもの」

 こんな細腕では足りないのだ。何もかも足りない。護るにも支えるにも掴むにも奪うにも壊すにも、全然足りない。
 もっと力があればたとえばこの男を奪われた挙句にみすみす死なせるような真似もしなくてよかっただろうに。また彼が何一つ躊躇いなく前を見据えて歩かせてやることができるかもしれない。何一つ心配することもなく過去の痛みに引きずられることもなく。
 あるいはそんな抽象的な仮定ではなくて、もしもっと力があったなら、男のような腕力があったなら、たったいま、隣でのんきなことを言ったこの男を――どうしようもなく焦がれ愛してやまないこの男を――押さえつけて拘束して、彼女の望む言葉を吐かせるまで――そんなことも、可能だろうに。奪うことに抵抗はなかった。勾陣がそれをしないのは、実際問題不可能だからだ。押し倒すことはできるだろう。けれど押さえつけることはできない。たやすくふり払われてしまう。それは勾陣が通力で紅蓮にかなうことのないのと同じように絶対的な永劫の差だ。しかし可能ならば躊躇いなく奪った。それほどまでに膨れ上がった心は、もうどうしようもないところまできている。そのくせ逃げ場のある状態で彼の手を掴む勇気すらない。
 そしてこの手は、自分の恋を壊すことすらできないのだ。
 ただ待っている。空いた手。何もできない手。腕。彼が差し伸べてくれる手を待っている。その日をただずっと待っている。
 白く細くしなやかな。
 それが何だというのだ。
 たったそれだけの役立たずな腕は、だからいっそのこと、いらないのだ。

 とたんに男は慌てた風になった。予期せぬ応えとらしくない彼女の様子に狼狽を隠そうともせず腰を浮かす。浮かして、どうするでもなく、そのまま、少しだけ身を乗り出しているけれど勾陣に触れてくることはなく、言葉と行動を探して見つからずにあわあわしていた。勾陣のたったひとことでこの男がここまで反応することが愉快だった。好いた男が自分のせいで自分のために心を自分に向けることはそれがどんなかたちをとっていようと倒錯した充足感を与えるのだった。
 少し笑った。唇だけを震わせる。
 ざまあみろ。
 それがどんな意味を持って空気を震わせたのか、勾陣自身も分からなかった。









何を書いているのか よく わからない (ぇー)

ただこの二人は男女逆転してたら何もかも簡単にすらすら進むような気がしてならない

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碧波 琉(あおば りゅう)
少年陰陽師・紅勾を中心に絶えず何かしら萌えor燃えている学生。
楽観主義者。突っ込み役。言葉選ばなさに定評がある。
ひとつに熱中すると他の事が目に入らない手につかない。

今萌えてるもの
・紅勾、青后、勾+后(@少年陰陽師)

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