Be praying. Be praying. Be praying.
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だからそのまま突き進むしかなかった。
天后一人語りっつーか微妙に青后っつーか。
紅蓮を嫌いだってことでちょっと一部で好かれてなさげな子だけど何よりその部分が天后の魅力だと思うんでそこクローズアップしてみたらなんかひどいことになった気がする。
天后一人語りっつーか微妙に青后っつーか。
紅蓮を嫌いだってことでちょっと一部で好かれてなさげな子だけど何よりその部分が天后の魅力だと思うんでそこクローズアップしてみたらなんかひどいことになった気がする。
騰蛇のことが嫌いだった。たぶん発生した瞬間から。その時はまだ騰蛇に何の原因もなかった。強大な凶将としての神気はどちらかと言えば嫌悪や不快よりは恐怖に近かったけれど、そのほかのもの、たとえば六合より無口で青龍より頑固で他者と交わろうとしない性質だとか、は明確に嫌いだった。彼は全身で理解するなと叫んでいたから、私は彼の望みどおりに、他のみんなと同じように、彼を理解することを放棄した。それで不具合が生じたことはなかったし、それを誰に咎められるわけでもなかった。
白くて音のない冬の日だった。「十二神将火将騰蛇」ではなく、「彼」のことを嫌いになった。彼は不可侵であるべき理を犯し、私たちの唯一と言える主を殺めかけ、さらには凶将の牙を私たち同胞に向けた。嫌悪が憎悪に変わるのにはそれだけで充分だった。命がけで彼の暴走を止めた勾陣には悪いけれど、どうして殺さなかったのかと思った。晴明様が彼を許したことも、彼を殺そうと意気込む青龍を命令で止めたことも理解できなかった。私にもっと力があれば、きっと青龍と同じことをしようとしただろうから。何もわからなかった。何も、何も。混沌としたあの時、たったひとつ、彼が嫌いなことだけ、何よりもはっきりわかっていた。それは彼の望みでもあるようだったし――結果的に彼の望みを叶えるかたちになったのは実に気に食わないことだけれど――それで不具合が生じることも、それを誰かに咎められることもなかった。晴明様は少しだけそんな私――私たち――をさびしげに見ていらっしゃった。そのほのかな微笑みと優しい声が、細い細い針のように私の心の臓をじくじくと刺した。
騰蛇を忌み嫌い避けることは「正しい」ことだった。誰もそれを否定せず、それどころかひそやかに肯定した。正しさに胡坐をかいていたわけではないけれど、それは私に安堵と安寧をもたらした。彼のせいでささくれ立つ心は、けれど、だからこそ、十二分に穏やかだった。私から彼を糾弾しに行ったこともなかった。私の紡ぐ時間の中に彼を入れてしまうことそのものが嫌だった。
もういいんじゃないか、と。最初に言ったのは誰だったのかしら。
晴明様ではなかったし勾陣でもなかったことは覚えている。
いつの間にか孤独だったはずの彼は輪の中で笑うことを覚えていて、そのことを喜ばれていて、咎人だったはずの彼は言わずに飲み込んだまま忘れ去られた言葉のように許されていた。その変化は私の預かり知らぬ間に――いいや、ちらちらと視界に入っていたそのさまを忘れたくて目を閉じ耳を塞いでいた間に起こっていた。
なんで。どうして。だってまだ過去じゃない。瞼の裏に焼付いたあの雪の日は、まだ過去になんてなっていない。私の大事なものが一度に奪われかけたあの日は、まだ。
もういいんじゃないかと言ったその誰かは私と同じはずだった。私と同じように、騰蛇を忌み、嫌い、憎み、避けていたはずだった。彼だか彼女だかだってそれを正しいとしていたはずだった。なのにいつの間にか同じだったはずの彼/彼女は私をゆるやかに否定していた。だからと言って彼への感情が何かみんなの望むものに変わることなんてありはしなくて、嫌いなものは嫌いなままで許せないものは許せないまま、正しかろうが正しくなかろうが少なくとも私の中でだけは正しいものとして、だってそうでもしないとあの日からの、いいえもしかしたら発生してからのすべての私が間違っていたみたいで、余計に何もわからなくなってそんなわけないなんて言われてもごちゃごちゃした黒いものが綺麗になってくれるわけはなかくて、たとえ誰もが間違っていると口を揃えて嘲ってもそのまま突き進めばそのうち正しくなるかもなんて、だけれど誰が間違いと言っても私の中ではあの日から変わらず正しいままで、許せるものなら許したいけどやっぱり許そうなんて思わなくて許したいだなんてもちろん思うはずもなくて誰かが彼を許すたびに彼が誰かから喜ばれるたびにかつて晴明様が心からの慈悲で私の心の臓に送り込んだあの針の痛みが私の息を塞ごうとした。
彼が誰からも許されることを私たちのうちで誰よりも望んでいるはずの勾陣はもういいんじゃないかなんて言わなかった。ただそっと、困ったやつだと言いたげに、それでもやはり彼が嫌いなのだと呟く私の髪を撫でた。だけれど勾陣に私の中のぐるぐる暗い感情を投げつけてさらけ出せるわけなんかなかった。だってあの子は、あの子の心は騰蛇の傍に寄り添っていたから。それを傷つけ汚してしまったが最後、あの子に嫌われるのではないかと思うと何もかもすくんでしまってどうしようもなかった。
だから、青龍だけだった。貴方だけだった。貴方だけが私を、私のなかでもう寝息のように脈打っていた嫌な感情を否定せず、私がそれをぶつけるのに何の躊躇もいらなかった。それは貴方が私以上に彼を嫌っていたからでもあったし、貴方が私に興味がなかったからでもあったし、どちらかと言えば後者が強かったのかもしれなかったけれど、それでもよかった。騰蛇が許せないの、と貴方に言った。他の誰が何て言っても、許せないの。貴方は一言、私すら嫌悪しているような声で――あの時は別にそれでもいいなんてことを思った――許す必要がどこにある、と吐き捨てた。生かす必要がどこにある、とさえ、きっと貴方は言うでしょう。そして私はそれに頷いて。
そんな理由で。そんな理由で貴方を好いた。綺麗だなんて口が裂けても言えないようなはじまりだった。誰かを殺したいほど嫌いだという感情から貴方を理解し貴方に触れ返ってこなくても充分だと思えるほどの透明な恋を知った。唾をかけられ罵倒され踏みつけられても文句の言えない恋だった。私の方が彼よりもはるかにあの子にも貴方にも大事にされる資格などないひどい存在なのかもしれない。そんなことに思い至って、たまに狂ったように笑いたくなる。優しいなんて誰が言ったんだっけ。そんなこと。
彼への嫌悪を呪いのように紡ぐこののどがあの子と笑いあい貴方への愛を精一杯に絞りだす。知っているのかいないのかはもうどうでもよくて、けれどそれさえ貴方は否定しないから、私のいちばん汚い部分さえ貴方は受け入れてくれるから――そんな消去法の結果さえ貴方は守ってくれたから、
だから貴方の傍は心地がいいの、と。告げたら貴方は嗤うのかしら。ひとかけらの微笑みさえ見せてくれないその口で、私と重ねたその唇で、貴方は私をさげすむかしら。
白くて音のない冬の日だった。「十二神将火将騰蛇」ではなく、「彼」のことを嫌いになった。彼は不可侵であるべき理を犯し、私たちの唯一と言える主を殺めかけ、さらには凶将の牙を私たち同胞に向けた。嫌悪が憎悪に変わるのにはそれだけで充分だった。命がけで彼の暴走を止めた勾陣には悪いけれど、どうして殺さなかったのかと思った。晴明様が彼を許したことも、彼を殺そうと意気込む青龍を命令で止めたことも理解できなかった。私にもっと力があれば、きっと青龍と同じことをしようとしただろうから。何もわからなかった。何も、何も。混沌としたあの時、たったひとつ、彼が嫌いなことだけ、何よりもはっきりわかっていた。それは彼の望みでもあるようだったし――結果的に彼の望みを叶えるかたちになったのは実に気に食わないことだけれど――それで不具合が生じることも、それを誰かに咎められることもなかった。晴明様は少しだけそんな私――私たち――をさびしげに見ていらっしゃった。そのほのかな微笑みと優しい声が、細い細い針のように私の心の臓をじくじくと刺した。
騰蛇を忌み嫌い避けることは「正しい」ことだった。誰もそれを否定せず、それどころかひそやかに肯定した。正しさに胡坐をかいていたわけではないけれど、それは私に安堵と安寧をもたらした。彼のせいでささくれ立つ心は、けれど、だからこそ、十二分に穏やかだった。私から彼を糾弾しに行ったこともなかった。私の紡ぐ時間の中に彼を入れてしまうことそのものが嫌だった。
もういいんじゃないか、と。最初に言ったのは誰だったのかしら。
晴明様ではなかったし勾陣でもなかったことは覚えている。
いつの間にか孤独だったはずの彼は輪の中で笑うことを覚えていて、そのことを喜ばれていて、咎人だったはずの彼は言わずに飲み込んだまま忘れ去られた言葉のように許されていた。その変化は私の預かり知らぬ間に――いいや、ちらちらと視界に入っていたそのさまを忘れたくて目を閉じ耳を塞いでいた間に起こっていた。
なんで。どうして。だってまだ過去じゃない。瞼の裏に焼付いたあの雪の日は、まだ過去になんてなっていない。私の大事なものが一度に奪われかけたあの日は、まだ。
もういいんじゃないかと言ったその誰かは私と同じはずだった。私と同じように、騰蛇を忌み、嫌い、憎み、避けていたはずだった。彼だか彼女だかだってそれを正しいとしていたはずだった。なのにいつの間にか同じだったはずの彼/彼女は私をゆるやかに否定していた。だからと言って彼への感情が何かみんなの望むものに変わることなんてありはしなくて、嫌いなものは嫌いなままで許せないものは許せないまま、正しかろうが正しくなかろうが少なくとも私の中でだけは正しいものとして、だってそうでもしないとあの日からの、いいえもしかしたら発生してからのすべての私が間違っていたみたいで、余計に何もわからなくなってそんなわけないなんて言われてもごちゃごちゃした黒いものが綺麗になってくれるわけはなかくて、たとえ誰もが間違っていると口を揃えて嘲ってもそのまま突き進めばそのうち正しくなるかもなんて、だけれど誰が間違いと言っても私の中ではあの日から変わらず正しいままで、許せるものなら許したいけどやっぱり許そうなんて思わなくて許したいだなんてもちろん思うはずもなくて誰かが彼を許すたびに彼が誰かから喜ばれるたびにかつて晴明様が心からの慈悲で私の心の臓に送り込んだあの針の痛みが私の息を塞ごうとした。
彼が誰からも許されることを私たちのうちで誰よりも望んでいるはずの勾陣はもういいんじゃないかなんて言わなかった。ただそっと、困ったやつだと言いたげに、それでもやはり彼が嫌いなのだと呟く私の髪を撫でた。だけれど勾陣に私の中のぐるぐる暗い感情を投げつけてさらけ出せるわけなんかなかった。だってあの子は、あの子の心は騰蛇の傍に寄り添っていたから。それを傷つけ汚してしまったが最後、あの子に嫌われるのではないかと思うと何もかもすくんでしまってどうしようもなかった。
だから、青龍だけだった。貴方だけだった。貴方だけが私を、私のなかでもう寝息のように脈打っていた嫌な感情を否定せず、私がそれをぶつけるのに何の躊躇もいらなかった。それは貴方が私以上に彼を嫌っていたからでもあったし、貴方が私に興味がなかったからでもあったし、どちらかと言えば後者が強かったのかもしれなかったけれど、それでもよかった。騰蛇が許せないの、と貴方に言った。他の誰が何て言っても、許せないの。貴方は一言、私すら嫌悪しているような声で――あの時は別にそれでもいいなんてことを思った――許す必要がどこにある、と吐き捨てた。生かす必要がどこにある、とさえ、きっと貴方は言うでしょう。そして私はそれに頷いて。
そんな理由で。そんな理由で貴方を好いた。綺麗だなんて口が裂けても言えないようなはじまりだった。誰かを殺したいほど嫌いだという感情から貴方を理解し貴方に触れ返ってこなくても充分だと思えるほどの透明な恋を知った。唾をかけられ罵倒され踏みつけられても文句の言えない恋だった。私の方が彼よりもはるかにあの子にも貴方にも大事にされる資格などないひどい存在なのかもしれない。そんなことに思い至って、たまに狂ったように笑いたくなる。優しいなんて誰が言ったんだっけ。そんなこと。
彼への嫌悪を呪いのように紡ぐこののどがあの子と笑いあい貴方への愛を精一杯に絞りだす。知っているのかいないのかはもうどうでもよくて、けれどそれさえ貴方は否定しないから、私のいちばん汚い部分さえ貴方は受け入れてくれるから――そんな消去法の結果さえ貴方は守ってくれたから、
だから貴方の傍は心地がいいの、と。告げたら貴方は嗤うのかしら。ひとかけらの微笑みさえ見せてくれないその口で、私と重ねたその唇で、貴方は私をさげすむかしら。
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