Be praying. Be praying. Be praying.
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強く強く思うほどに叶わなかった。
少年陰陽師・紅勾。たぶん。
下のやつの続き的な。
少年陰陽師・紅勾。たぶん。
下のやつの続き的な。
振り上げられた左腕は、しかし空を切る途中でぴたりと止まり、そのまま重力に任せて下ろされた。その手をきゅうと握り締め、勾陣は紅蓮をきつく睨み上げる。紅蓮は苦笑気味に勾陣を見た。その双眸はどこまでも勾陣を気遣っていて、彼女は無意識に下唇を噛んでいた。
炎の爆ぜる、音がする。何かが焼ける、音。におい。不自然にべとつく唇。
「……勾…」
困り果てた声が呼んだ。自分は泣いてしまいたいのだとどこか客観的に思いながら、勾陣は抑揚の欠けた声を出した。
「お前の自己犠牲は見ていて反吐が出る」
紅蓮は何も返さない。それが余計に彼女を苛立たせた。
「何故何もかもを一人で背負おうとする。何のために私がここにいたと思って」
――何のためにお前はここにいた、勾陣。
投げかけようとした言葉は自分に向けてのものだった。それに気づいて勾陣は黙り込んだ。紅蓮は何も言ってこない。勾陣はさらに強く唇を噛み締めた。口の中に広がる鉄の香。
二度と理を冒させてはならないと思っていた。彼がどれ程罪の意識にさいなまれていたか勾陣は誰よりも傍で見ていたし肌で感じてきていた。だからこそ二度はないはずだった。二度など起こさせないつもりだった。これ以上彼の背に重荷を背負いこませないと決めていた。――それなのに。
彼が勾陣を気遣ったのは明白だった。それが分からない程勾陣の頭は弱くない。
「……お前に背負わせたくなかったんだ」
「それは私の台詞だ」
「前も言っただろう。俺は他の奴に比べて枷が」
「それ以上言ったら本当に殴るぞ。いけしゃあしゃあと分かったような顔で嘘を吐くな。それしきの嘘に私が騙されるとでも思っているのか」
「………言わないと、お前は納得しないだろう」
「言われたところで納得できるか、たわけ」
覚悟はあった。この手が血に汚れる覚悟など、とうの昔に出来ていた。
――覚悟など、とうに出来ていたというのに。
それは紅蓮に向かって『反吐が出る自己犠牲』と評したものと全く同等の覚悟であったが、己が背負う分には全く問題はなかった。その点で、紅蓮の意識と勾陣の意識は共通している。故に、共通しているからこそ、紅蓮の行動と何も出来なかった自分が憎くてたまらない。
「私が、何のためにいたと…思っているんだ……」
絞り出した声に覇気はなかった。
お前は知らない。私がどれ程今が現実になることを恐れていたかを、お前は想像だにしない。
互いに身勝手を押し付け合った結果だった。互いが互いに理を冒させたくないと強く思っていた、その身勝手が交錯し合い、最終的に紅蓮の身勝手が貫かれた。どう転んでもどちらかが傷つきどちらかが悔やむ未来は不可避であり、だからこそ勾陣は汚れるのが己が手であればと決意を固めていたのだ。彼が明確な意志の下に存在否定をすることのないようにと。
「…すまん」
「二度はないと約束するなら、謝れ」
「…………」
謝罪はなかった。やはり、と勾陣は顔を歪めた。
手を伸ばし、彼の頭に置く。紅蓮がきょとんと勾陣を見つめた。
勾陣は無理矢理笑ってみせた。
「…………頑張った、な…」
出来の悪い子供を不器用に褒めるかのように、勾陣は紅蓮を労う。その言葉は今この場にそぐってはいなかったが、勾陣は他に何を言っていいのか分からなかった。
泣き出してしまいたい衝動を、今度はしかと自分のものとして実感しながら、勾陣はぐしゃぐしゃと彼の頭を撫で続けた。
炎の爆ぜる、音がする。何かが焼ける、音。におい。不自然にべとつく唇。
「……勾…」
困り果てた声が呼んだ。自分は泣いてしまいたいのだとどこか客観的に思いながら、勾陣は抑揚の欠けた声を出した。
「お前の自己犠牲は見ていて反吐が出る」
紅蓮は何も返さない。それが余計に彼女を苛立たせた。
「何故何もかもを一人で背負おうとする。何のために私がここにいたと思って」
――何のためにお前はここにいた、勾陣。
投げかけようとした言葉は自分に向けてのものだった。それに気づいて勾陣は黙り込んだ。紅蓮は何も言ってこない。勾陣はさらに強く唇を噛み締めた。口の中に広がる鉄の香。
二度と理を冒させてはならないと思っていた。彼がどれ程罪の意識にさいなまれていたか勾陣は誰よりも傍で見ていたし肌で感じてきていた。だからこそ二度はないはずだった。二度など起こさせないつもりだった。これ以上彼の背に重荷を背負いこませないと決めていた。――それなのに。
彼が勾陣を気遣ったのは明白だった。それが分からない程勾陣の頭は弱くない。
「……お前に背負わせたくなかったんだ」
「それは私の台詞だ」
「前も言っただろう。俺は他の奴に比べて枷が」
「それ以上言ったら本当に殴るぞ。いけしゃあしゃあと分かったような顔で嘘を吐くな。それしきの嘘に私が騙されるとでも思っているのか」
「………言わないと、お前は納得しないだろう」
「言われたところで納得できるか、たわけ」
覚悟はあった。この手が血に汚れる覚悟など、とうの昔に出来ていた。
――覚悟など、とうに出来ていたというのに。
それは紅蓮に向かって『反吐が出る自己犠牲』と評したものと全く同等の覚悟であったが、己が背負う分には全く問題はなかった。その点で、紅蓮の意識と勾陣の意識は共通している。故に、共通しているからこそ、紅蓮の行動と何も出来なかった自分が憎くてたまらない。
「私が、何のためにいたと…思っているんだ……」
絞り出した声に覇気はなかった。
お前は知らない。私がどれ程今が現実になることを恐れていたかを、お前は想像だにしない。
互いに身勝手を押し付け合った結果だった。互いが互いに理を冒させたくないと強く思っていた、その身勝手が交錯し合い、最終的に紅蓮の身勝手が貫かれた。どう転んでもどちらかが傷つきどちらかが悔やむ未来は不可避であり、だからこそ勾陣は汚れるのが己が手であればと決意を固めていたのだ。彼が明確な意志の下に存在否定をすることのないようにと。
「…すまん」
「二度はないと約束するなら、謝れ」
「…………」
謝罪はなかった。やはり、と勾陣は顔を歪めた。
手を伸ばし、彼の頭に置く。紅蓮がきょとんと勾陣を見つめた。
勾陣は無理矢理笑ってみせた。
「…………頑張った、な…」
出来の悪い子供を不器用に褒めるかのように、勾陣は紅蓮を労う。その言葉は今この場にそぐってはいなかったが、勾陣は他に何を言っていいのか分からなかった。
泣き出してしまいたい衝動を、今度はしかと自分のものとして実感しながら、勾陣はぐしゃぐしゃと彼の頭を撫で続けた。
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