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罪を犯す。



少年陰陽師・紅勾。たぶん。

もし紅蓮が自分の意志で理を冒す瞬間が来たら、その時姐さんが傍にいたら、もしかしたらこうなるかもしれない、的な。
自虐的な自己犠牲。昌浩から伝染?

 人の旗下に在る以上、人間を相手にすることが多いのは当然で、いつかはこの日が来ると分かっていた。承知の上で人の傍に在り続けたのだから覚悟なぞとうに出来ていたし、実際に口に出したこともある。
 ――覚悟など、とうに出来ていたというのに。
 紅蓮は、場にそぐわぬ微笑を僅かに零した。傍らの勾陣へ近寄り、囁きかける。
「……勾、少し休んでいろ」
 筆架叉を逆手に構え、約五間先の人物に今にも切りかからんとしていた勾陣に、言うが早いが彼は手刀を叩き込んだ。
「なっ……!?」
 かくん、と勾陣の膝が沈む。加減はした、落とすような真似はしていない。ただしばらくは思うように力が入らず、動けないだろう。
 片膝を付く格好となった勾陣は紅蓮を見上げ、声を荒げた。
「騰蛇、貴様何を!」
「文句は後でいくらでも聞く。……お前は、駄目だ」
 驚愕と憤怒で炯々と輝いていた黒曜石が、更なる驚愕で見開かれた。それを認め、柔らかく一度瞬きをした紅蓮は、次いで地を蹴った。その右腕が炎を纏う。
 覚悟はあった。もとより三度も罪を犯した身だ、これ以上重ねたところで何が違おう。守りたいものを守る、そのための罪ならば嘆くいわれなどどこにもない。もとより罪の意識は理を冒したことそのものよりも、主やその友人を殺しかけた、或いは殺した、その事実の方に傾いていた。
「騰蛇っ!!」
 後方から声が聞こえた。何故そんなにも悲痛なのだろう。
 自分の手が汚れることに躊躇などなかった。しかしその分だけ、あの手だけは汚しては駄目だと思っていた。細く白く華奢で、しかし己の背を護り隣に立ち、守るものを守りぬけるだけの力を持つ、彼女の手。あれだけは駄目だ。それは紅蓮の身勝手だった。だから文句も糾弾も甘んじて受けよう。
 いつかあの手は血に濡れる。――紅蓮の血に。いつかまた、紅蓮が大切なものを自身の手で奪いかけたならば、その時は、死を以て止めてくれ、と、紅蓮が彼女に頼んだから。だからせめて、その日まで。彼女が同族殺しの罪を犯す、その日まで、あの手は白く清いままに。
 何の罪も知らないままに。
「――騰蛇っ!!」
 声が、聞こえた。
 愛おしげに目を細め、彼は右腕を薙ぎ払った。

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碧波 琉(あおば りゅう)
少年陰陽師・紅勾を中心に絶えず何かしら萌えor燃えている学生。
楽観主義者。突っ込み役。言葉選ばなさに定評がある。
ひとつに熱中すると他の事が目に入らない手につかない。

今萌えてるもの
・紅勾、青后、勾+后(@少年陰陽師)

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