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始まりはほんとうにほんとうにささやかな願いでした。




少年陰陽師・現代紅勾。
紅←勾の始まりは、紅蓮が昌浩に笑いかけたのを見たあの瞬間! と頭の中で決まってます。
で、それは恋とか愛とかじゃなくて、その種みたいなものだったと。

あれ紅蓮ってどういうキャラだったっけ(←
格好いいへたれ、的な。……どんなだろう…。

 眠っていた意識が浮上する。瞼を閉じた世界で傍らによく知った気配を感じ取って、勾陣はゆるりと目を開けた。気配の方へ首を巡らすと想像通り紅蓮である。目が合う。何故だか固まってしまった彼に、その原因の見当をつけつつ勾陣は口を開いた。どうせ自分に何か言われると思ったに違いない。
「おはよう、騰蛇」
 だから敢えて彼の予想に外れるだろう言葉を投げてやると、拍子抜けしたらしい紅蓮が体の力を抜いた。分かりやすい。
「…………もう五時だぞ」
 言われて壁掛け時計を確認すると、確かに彼の言うとおりだった。おはよう、の時間では断じてない。
「コーヒーでも淹れてこようか?」
 その申し出はありがたく受け取って、台所へ行く彼の後姿を眺めつつ勾陣は体を起こした。少しまどろむだけのつもりでソファに体を横たえたのだが、どうやら完全に寝入ってしまったらしい。記憶にある時間はまだ二時だった。
 僅かに残る眠気を振り払い終わったころ、彼が両手にマグカップを持って戻ってきた。一つを受け取り口を付けると紅蓮が隣に座った重みで体がソファに少し押し上げられた。
「いい夢でも見たのか」
「どうしてそう思う?」
「いや、なんだか機嫌がよさそうだったから」
 一口分のコーヒーを飲み、勾陣は「そうだな」と呟いた。喉がじんわり熱い。
「いい夢……というか。懐かしい夢を見たよ」
 遥かに千年も昔になり果てた出来事である。飛びぬけた見鬼の才と陰陽道の才を持っていただけの、他はまったくありふれた、どこにでもいそうなたった一人の嬰児が、哀しい男の孤独を溶かした。まだ言葉もおぼつかぬ声が不器用に紡いだ名は、彼の笑顔を引き出した。その、瞬間の光景。彼女はそれをじかに見た。一部の人間から紅蓮と呼ばれる、背を預けるには足るが信頼には足らないと思っていた騰蛇が柔らかく笑み崩れたその一瞬を、勾陣は確かに見ていた。目の奥に、脳裏に、心の遥か深くに刻まれた、完成された美しい一枚の絵に、そうして引き出された願いがあった。
「思い出したことがあるんだ」
 紅蓮は無言で耳を傾けている。
 叶わないと思っていた願いだった。あの子に勝てると思ったことはただの一度だってなかったし、匹敵すると思ったことすら今までの生でただの一度だってなかった。
 それでも焦がれて焦がれてやまなかったささやかな願いがあったのだ。
「騰蛇」
 勾陣は紅蓮に目を合わせ、笑った。出来るだけ綺麗に、柔らかく。一瞬虚を突かれ目を丸くした紅蓮は、しかし次いでつられるように微笑した。呼応して勾陣は笑みを深くする。胸の奥から湧き上がる至福感をそのまま上乗せして。
「どうした?」
「……うん」

 思い出したことがあるんだ。
 あの表情が私に向いたらどんなだろうかと。
 初めはただ、この笑みが欲しかっただけだった。

拍手[2回]

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…!
す、素敵なお話に思わずニヤりと顔が綻びました…っ
勾陣のささやかな願いが、もう可愛すぎてっ。

毎回こっそり楽しみにしております。
…季節の変わり目ですが、体をご自愛ください><
乱文乱筆失礼しました。
御巫 灯火 2009/11/03(Tue)00:58:33 編集
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碧波 琉(あおば りゅう)
少年陰陽師・紅勾を中心に絶えず何かしら萌えor燃えている学生。
楽観主義者。突っ込み役。言葉選ばなさに定評がある。
ひとつに熱中すると他の事が目に入らない手につかない。

今萌えてるもの
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