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この恋はいつ熟してくれる?





最近ゲームがやっとひと段落つきました。
FE覚醒面白いよ!「このキャラとこのキャラをくっつけれたらなぁキャラ同士の仲人してたい」とか思ってる貴方にとてもおすすめ!(何の販促だ)
問題点は組み合わせが多彩過ぎてときめいた二人がマイナーなことが多々あることです


そしてこれは相変わらず両思いだけどくっつき方が分かってない紅勾

 どうしようか、とは何度目の言葉になるだろうか。そして彼女は脈絡のない紅蓮の問いかけに疑問を呈するでもなく息を吐く。その微笑みはどこか軽やかで、一方の紅蓮にも思い詰めた色があるでもなく普段の会話の延長線上を外れない。やがて彼女はどうしようかなと紅蓮の言葉を鸚鵡返しにただ呟いた。

 飽きもせず機を逃し続けている、とはほかの誰でもない勾陣の評である。往々にして自分自身を除外する彼女の客観的視点と洞察力が珍しく本人にも向けられた一例だ。酒を酌み交わしながら勾陣がそう言ってのけた相手は同じく当事者である紅蓮であったが、彼は気分を害さなかった。
「お前、まるで他人事だな」
「そうだな、半分ほど他人事のようだ」
 我ながらいっそ面白い、と続けた勾陣は紅蓮をまっすぐ見据えて言う。「お前は?」
「俺?」
「お前は現状をどう思っている? と聞いているんだ。たとえば危機意識などは……すまない、なかったな」
「人の感情を勝手に断言するな」
 軽く小突いた拍子に彼女の杯の水面が波立った。しかし内容を否定するだけの材料が紅蓮にないのも確かでそれ以上の異を唱えられない。紅蓮の内心はたとえばこの異界のように見晴らしがよく、その範囲において彼女の言う危機意識だのほかにも焦りだの覚悟などというものは存在しなかった。
 彼女はくつりとのどを鳴らして杯を煽ると紅蓮の鼻先に空のそれを近づける。「自分でやれ」と言いながら紅蓮はそこに容器を傾けた。
「……よく考えれば、いまだって機だな」
 紅蓮の言葉に「そういえば」と彼女は頷く。
「よく気づいたな、騰蛇。もうついでだ、活かしてみろ」
「…………活かせるだけの隙くらい作ってくれ」
「へたれ」
「いや、あのな」
「なんだ、文句があるなら言ってみろ。ちなみに私の主義は三倍返しだが」
「……もういい、それで」
 紅蓮は思わず額を手で覆う。これでいっそ勝ち誇られでもすればそれによって生じる苛立ちを彼女に転嫁することもできるのだが取り立てて何をするでもなく飄々と普段通りでいられるものだから自分の情けなさが積もっていくばかりでそれがまた情けない。だがこの女に口で勝てる相手などいるものかというのが紅蓮の持論だ。彼女以上の舌戦女王などいてたまるか。
 なんでこんな面倒くさい女を、と紅蓮はたまに考える。たぶん勾陣の方も、なんでこんな頼りない男を、くらいは(紅蓮としてはその表現を認めたくはないが彼にだって他人の立場に立って相手の感情を仮定するくらいの共感能力はあるのである)、きっと思っているはずだ。それでも互いに互いの存在と痕跡を塗りつぶし消すどころか後生大事に抱えようと懸命なのだから、おそらくもう仕方のないことで、それでいて足掻いて手を伸ばそうとは互いにしないのだから、その矛盾は彼女が笑ったようにいっそ面白くもある。
「……お前だって」
「うん?」
「待っているわけではないだろう?」
 勾陣は少し、目を見開く。その表情を引き出せたことが紅蓮にとってはどこか愉快だった。この程度わからないと思ってもらっては困る、紅蓮は彼女自身より彼女を深く理解している自負がある。
 勾陣は肩をすくめて笑った。
「残念だが、正解だな」

 そんな会話をしたことがある。
 近くなりすぎた、というのが暗黙の共通見解だった。向き合うよりは背を合わせで、睦言よりは軽口を積み重ねた時間はふたりを男と女ではなくただのふたりとして心地よくいまに縛り付けた。それは覆しようのない事実であり、あるいは体のいい言い訳にすぎないのかもしれない。確かなのは変わるでもなく変わっていけると根拠なく信じていたことは根拠がなかったとおりに嘘だったらしいことだけだ。どうやら関係性を変えるには適切な方法が必要であり、そして本来想いを確認し合えばそれで足るはずのその通過儀礼も自分たちには無意味になって、焦るわけでもなく嘆くわけでもなく相も変わらずの軽口と冗談を叩きながら必要なそれが何か模索することしかいまとなっては出来なくなった。
 どうしようか。どうしようかな。
 はぐらかすような響きでもふたりはそれなりに真剣である。
 だって深刻な音色をはらませたらなかなかに救われないではないか。

 そうして今日も変わらない問答は変わらないまま彼女は定められているかのように同じ台詞を呟いた。ぞんざいに扱われるその言葉はまるで持て余した恋を消耗して音になるようだと紅蓮はたまに思う。
 一度だけ口づけを交わしたことがある。そうしたら何か変わってくれるのではないかと、なんとなく。触れて、離れて、そしてふたりで首を傾げた。まだ時期尚早な行為だった気がして、同時にもう手遅れになってしまった気もして、とにかく少なくともそのときには相応しくない行為だと言うことだけは了解したので交わした口づけはあれ一度きりだ。
 ふ、と、勾陣は紅蓮を見据えた。手にすることを躊躇うほど高潔に佇んでみせる彼女に紅蓮はなぜだかひどく安心する。紅蓮が愛した女はいついかなる時も紅蓮が愛したとおりに凛然と強い。
「――…ようか」
「え?」
「お互いが手放しでいちばんになったら、にしようか」
 彼は目をしばたたかせる。
「勾、それは」
 無限回廊の如くぐだぐだと続きに続いたこの関係への前向きな期限にしては訪れる日の見えない彼女の条件に紅蓮は裏の気配を感じ、感じたそれは言葉にすることが怖い。
 口を開きかけた紅蓮を遮り、女はきれいに微笑む。
「お前に任せるよ、騰蛇。――お前の好きにとればいいさ」
 いつだったか言ったように私は別にお前を待っているわけじゃない、と続ける彼女に紅蓮は笑い返す。上手くいかず、少し歪んだ。安堵と呆れが混ざり合った。
「……お前は卑怯だ」
「何を失礼な。私はお前に誠実に応えようとしているだけじゃないか」
「俺だって同じだ、だがその言葉は…俺に押し付けようとしているだけだろう」
「人聞きの悪い。決定権を譲歩したと言え」
「いつも思うんだがなんでお前はそんなに上から目線なんだ……?」
「お前限定だ、感謝しろ」
「そんな限定はいらん、どうせなら」
 お前が欲しい。
 冗談に包もうとした本心が、包み損ねて、それ自身が拒否するようにのどに突っかかった。生まれてしまった間が紅蓮が失敗した言葉を示唆するようで今更焦る。軽口の感覚でも言おうとしたのは自分であるのに。
 きっと簡単な言葉なのに、何度も見返して見回して、目の前に彼女がいなければいくらでも呟けるのに。その理由を紅蓮は自覚している。それはなぜなら――
「…………恐ろしい、な」
 紅蓮の内心を救い上げたように呟いたのは勾陣の方で、その声は普段通り軽やかではあったけれど、彼は驚いて目を見開く。そして今度は彼女の台詞を奪うように口が動いた。
「失敗したらと思うと、な」
 たとえばあの言葉のように失敗することが怖かった。失敗して彼女とのすべてがなくなってしまうことが怖かった。失敗しなくても彼女との関係性がわずかでも不必要に消耗されてしまうことが怖かった。このまま行けば永劫失われるはずのない絆が純然たる恋愛に姿を変えて寿命が現れてしまうことが恐ろしかった。想いを確認しても唇を重ねても、きっと体を重ねても変わりそうのない「いま」だからこそ無理をすればすぐに壊れてしまいそうで。
 彼女は先の紅蓮と同じように驚いた様子で彼を見上げ、やがて戯れの様子を隠そうともせず「どうしようか」と言った。紅蓮が鸚鵡返ししてくることを承知した声だった。そして紅蓮は彼女の期待に沿うつもりだった。けれど紅蓮は彼女の左手を恭しく手に取るとその甲に唇を押しつけた。それはいつかの相応しくなかった口づけよりは紅蓮を満たした。彼女がどうかは分からないが、意表を突かれたらしい勾陣はしかし口元を和らげるとふいと傍向いて、さらさらと揺れた黒髪の隙間には覗く色があった。彼はそれを指摘はしなかった。勾陣はそれを望まないはずだし、紅蓮もまた言葉をあてはめがたい感情に揺らいでいるのであろう瞳を見られたくはなかった。
 そうして紅蓮は結局、どうしようかな、と言った。勾陣は紅蓮を見もせずに、彼が口づけた左手の甲、薬指の付け根、を愛おしげに撫ぜると「わからないよ」と首を振る。
「……正しい方法も、どうするべきかも、俺だって分からないが」
 たぶんどう転んでも、俺はお前が大事なんだと思う。
 そう告げた紅蓮に、勾陣は断言してくれないと意味がないと笑う。彼をからかいながら、紅蓮が愛した彼女らしからぬ泣きそうな子供に通じる表情がそこにはちらりと覗いていて、彼は失敗はしなかったが間違ったらしい自分を詫びるしかできなかった。

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碧波 琉(あおば りゅう)
少年陰陽師・紅勾を中心に絶えず何かしら萌えor燃えている学生。
楽観主義者。突っ込み役。言葉選ばなさに定評がある。
ひとつに熱中すると他の事が目に入らない手につかない。

今萌えてるもの
・紅勾、青后、勾+后(@少年陰陽師)

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