Be praying. Be praying. Be praying.
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少年陰陽師、紅勾。
前言ってた距離感、みたいなの。
少し離れた背中合わせ。静かで優しい雰囲気を出したかった(すでに過去系
なので意味のない雰囲気小説と成り下がってます。もう気にしない。
ちなみに。
「ペトルーシュカ」の関係性五題「背中合わせの切なさ」は物凄い紅勾意識して作ったことをここに告白します(笑
文章の書き方、忘れてる……orz
り、リハビリリハビリっ!
9/100
前言ってた距離感、みたいなの。
少し離れた背中合わせ。静かで優しい雰囲気を出したかった(すでに過去系
なので意味のない雰囲気小説と成り下がってます。もう気にしない。
ちなみに。
「ペトルーシュカ」の関係性五題「背中合わせの切なさ」は物凄い紅勾意識して作ったことをここに告白します(笑
文章の書き方、忘れてる……orz
り、リハビリリハビリっ!
9/100
後ろの気配が少しだけ動いた。しかしその変化は本当に微細なもので、本当に動いたのかどうか確証が持てないほどのものだった。肩越しに振り返ろうとして、やめた。代わりにただ目を閉じて、背後の気配を探った。
探ってみて、けれど、何も分からない。
何をしているわけではない。何を話すでもなく、触れ合うでもなく、少しだけ離れて背を合わせ、ぼんやりと時を数えていた。深い意味はなかったし、考える理由もなかった。曖昧で意味のない時間の中で、しかし自分が心地よさを感じていることが絶対的な真実だった。
奇妙な均衡が場を満たしていた。ふたりの背が触れ合うか触れ合わないか、拳ひとつ分もない距離が作り出している均衡は、ふとした拍子に、いや、何もせずとも、ともすれば崩れてしまいそうで、そして崩すことを躊躇うものであった。
相手が崩してきてくれないだろうか。ふとそんなことを思い、ないな、と思った。自分が感じている心地よさや躊躇はまったく同じように相手も感じているはずで、だとしたら相手から崩してくることはないだろうと思われた。もしかしたら同じように期待しているのかもしれない。同じように期待して、同じように諦めている。なかなかどうしてその想像は真実味を帯びていて、そっと頬を緩ませた。
本当に触れてきてほしいのかどうか、もしかしたら、自分でもよく分かっていないのかもしれない。少しだけ凭れかかればそこに触れるものがある、優しい温もりがある、自分はそれを知っていて、それが『存在していること』、そのものにもう満足を覚えてしまっているのかもしれなかった。
お互いに崩れることはないのだろうと思っていた距離はしかし唐突に崩された。
崩した方もその理由はよく分かっていない。
「騰蛇、借りるぞ」
不意な声に彼は彼女へと肩越しに視線を寄越した。
同時にそうと触れた柔肌に、彼は小さく目を見開いた。それとは対照的に、彼女はゆっくりと瞼を閉じて息を吐いた。――あたたかい。そこにあると知っていたものが、知っていた通りにそこにあった。
「…何だ、緊張しているのか?」
「誰がだ」
からかうような声音に彼もまた小さく息を吐いた。彼女の言う通りに少しばかり強張っていた背から力が抜ける。抜けてしまえばさらにはっきりと触れ合う柔らかさが意識された。
「そうか?」
笑みの滲む声には返さずに、代わりに彼も少しだけ凭れかかった。首筋に彼の髪先が当たって、彼女は僅かに肩を震わせた。彼はそれに気がついたし、どうしたのだろうと思ったが、それきり彼女の様子は変わらなかったので、何も聞かずに目を閉じた。
少しだけぶれてしまった均衡は、しかし新たなかたちを得て再構築されていく。先ほどまでとは違う、我が身で実感できる温度を伴って、二度目の均衡はあまりに静かで、あまりに優しい。
彼はふと思いついて、片手を斜め後ろに伸ばしてみた。そこに彼女の手があることを期待していたのだが、掴んだのは虚空と砂ばかりで、微かで手前勝手な落胆を覚えた。けれども、それは正しい結果なのかもしれなかった。近く、体は確かに触れあっていて、けれども手は届かない。そのもどかしさに落ち着きを覚えてしまうのだ。
一方の彼女は自分の手を眼前に伸ばして拳を閉めたりゆるめたりしていた。指と指の隙間から地平線が見えた。やや右方にぼんやりと山の影がある。見慣れ、今さら何の感慨も沸かない、何の変化も見えないつまらない景色であるが、背を合わせている彼が今見ている景色は自分が見ているものとは別のものなのだと、何となく思って、また、目を閉じた。
それを、寂しい、などとは思わない。
それどころか、彼女もまた、それが正しいことなのだと――何の確証もなく、考えていた。
お互いに瞑目して、同じものに集中していた。背に感じていた温さはもう当然のものと化していて、体温と一体化してしまっていた。だからこそ余計に放しがたくて、互いに何も言い出せなかった。ただそれぞれに、時を数え、心鼓を数える。
お互いが、いつ、このただ優しいだけの時間に終止符を打つのか、自分でも分かっていなかった。放し難い温さはぬるま湯に似ていた。出なければと思うのに、出てしまっては寒いから、放れてしまってはどこか寂しいからと、ずるずると現状を受け入れるだけ。
それでもそれは、この時間だけは、決して間違いではなかった。例え間違いだったとしても、彼も、彼女も、間違いではないと思っていたから、だから、間違いなどでは決してなかった。
探ってみて、けれど、何も分からない。
何をしているわけではない。何を話すでもなく、触れ合うでもなく、少しだけ離れて背を合わせ、ぼんやりと時を数えていた。深い意味はなかったし、考える理由もなかった。曖昧で意味のない時間の中で、しかし自分が心地よさを感じていることが絶対的な真実だった。
奇妙な均衡が場を満たしていた。ふたりの背が触れ合うか触れ合わないか、拳ひとつ分もない距離が作り出している均衡は、ふとした拍子に、いや、何もせずとも、ともすれば崩れてしまいそうで、そして崩すことを躊躇うものであった。
相手が崩してきてくれないだろうか。ふとそんなことを思い、ないな、と思った。自分が感じている心地よさや躊躇はまったく同じように相手も感じているはずで、だとしたら相手から崩してくることはないだろうと思われた。もしかしたら同じように期待しているのかもしれない。同じように期待して、同じように諦めている。なかなかどうしてその想像は真実味を帯びていて、そっと頬を緩ませた。
本当に触れてきてほしいのかどうか、もしかしたら、自分でもよく分かっていないのかもしれない。少しだけ凭れかかればそこに触れるものがある、優しい温もりがある、自分はそれを知っていて、それが『存在していること』、そのものにもう満足を覚えてしまっているのかもしれなかった。
お互いに崩れることはないのだろうと思っていた距離はしかし唐突に崩された。
崩した方もその理由はよく分かっていない。
「騰蛇、借りるぞ」
不意な声に彼は彼女へと肩越しに視線を寄越した。
同時にそうと触れた柔肌に、彼は小さく目を見開いた。それとは対照的に、彼女はゆっくりと瞼を閉じて息を吐いた。――あたたかい。そこにあると知っていたものが、知っていた通りにそこにあった。
「…何だ、緊張しているのか?」
「誰がだ」
からかうような声音に彼もまた小さく息を吐いた。彼女の言う通りに少しばかり強張っていた背から力が抜ける。抜けてしまえばさらにはっきりと触れ合う柔らかさが意識された。
「そうか?」
笑みの滲む声には返さずに、代わりに彼も少しだけ凭れかかった。首筋に彼の髪先が当たって、彼女は僅かに肩を震わせた。彼はそれに気がついたし、どうしたのだろうと思ったが、それきり彼女の様子は変わらなかったので、何も聞かずに目を閉じた。
少しだけぶれてしまった均衡は、しかし新たなかたちを得て再構築されていく。先ほどまでとは違う、我が身で実感できる温度を伴って、二度目の均衡はあまりに静かで、あまりに優しい。
彼はふと思いついて、片手を斜め後ろに伸ばしてみた。そこに彼女の手があることを期待していたのだが、掴んだのは虚空と砂ばかりで、微かで手前勝手な落胆を覚えた。けれども、それは正しい結果なのかもしれなかった。近く、体は確かに触れあっていて、けれども手は届かない。そのもどかしさに落ち着きを覚えてしまうのだ。
一方の彼女は自分の手を眼前に伸ばして拳を閉めたりゆるめたりしていた。指と指の隙間から地平線が見えた。やや右方にぼんやりと山の影がある。見慣れ、今さら何の感慨も沸かない、何の変化も見えないつまらない景色であるが、背を合わせている彼が今見ている景色は自分が見ているものとは別のものなのだと、何となく思って、また、目を閉じた。
それを、寂しい、などとは思わない。
それどころか、彼女もまた、それが正しいことなのだと――何の確証もなく、考えていた。
お互いに瞑目して、同じものに集中していた。背に感じていた温さはもう当然のものと化していて、体温と一体化してしまっていた。だからこそ余計に放しがたくて、互いに何も言い出せなかった。ただそれぞれに、時を数え、心鼓を数える。
お互いが、いつ、このただ優しいだけの時間に終止符を打つのか、自分でも分かっていなかった。放し難い温さはぬるま湯に似ていた。出なければと思うのに、出てしまっては寒いから、放れてしまってはどこか寂しいからと、ずるずると現状を受け入れるだけ。
それでもそれは、この時間だけは、決して間違いではなかった。例え間違いだったとしても、彼も、彼女も、間違いではないと思っていたから、だから、間違いなどでは決してなかった。
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