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Be praying. Be praying. Be praying.
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自分の妄想に萌えすぎて勉強できないとかアホすぎる。

てわけで紅←勾です。
終わってしまうことが怖くてはじめることすら出来ない女の話。

 さて騰蛇、お前が私を見始めたのはいったいいつ頃だったのだろうな。こんなことを聞くときっとお前は物音に驚いた仔犬のように目を丸くして打ち上げられた魚のように口を開閉させながら実に分かりやすく狼狽えるのだろう。この『見始める』が文字通りの意味ではないことくらい、いくらお前でも気づくだろうから。もしかしたらお前は気づかれていないつもりなのかもしれないが、私に、よりによって私にお前が何かを隠し通せると本気で思っているのなら、それはそれでお前が哀れでならないよ。お前は時折私が『鈍い』と言うけれど、このくらいお前から読みとることは息をするより簡単だ。どうしてか分かるか? おそらく分からないのだろう。こんなに簡単で明瞭な答え一つ、お前は決して分からないに違いない。――お前が私を見るより遙かに長い時を、私はお前を見て過ごしていたんだ。
 なあ騰蛇、私がお前を見始めたのは、いったいいつ頃だったのだろうな。こんなことを聞いてもお前に答えられるわけはないと知っているし、そもそもお前は私がお前を確かな意味を込めて見ているだなんて予想だにしていないのだろうけれど。私自身はっきりと答えることができる地点は、昌浩が舌足らずにお前の名を呼んだときだった、だがそこは決して始まりなどではなくて、始まりはもっとずっと遠い地点にあった。何がきっかけだったのだろう、何が契機だったのだろう。自問しても得られはしないこの答えを、問うてみたらお前は教えてくれるのだろうか。
 私たちの関係性と感情は、とうの昔にその性質を根本から違えてしまった。たくさんの思いと願いがあるよ。笑えるほどにいじましく、ささやかで、独り善がりな思いと願いが。そう、たとえば、そう。お前に触れられたい。名を呼ばれたい。お前の目にずっと映っていたい。お前の傍で時を数えたい。ほんの一瞬、刹那より短い時で構わない、お前の中のすべてになりたい。お前を満たすすべてになりたい。そして同時にお前に触れたいし名を呼びたいしお前だけを見ていたいし、瞬きよりもひどく短いひと刹那、私をお前で満たしてしまいたい。これは何ら特別な欲求ではなくて、ある意味必然的にこの感情へ付随するものであると知識としては知っていた、だけれどこんなにどうしようもなく、たったこれっぽっちの願いが叶えたくて叶えられなくて心臓がゆっくりと締め付けられるだなんてことはまったく知らなかった。そして私たちの関係性はこれらを叶えてしまうにはその器が小さすぎた。
 変わることはないのだろう。魂がそれを知っている。お前も私も、意識下で変化の時を待ちながら無意識下で機会を敢えて見過ごしているんだ。それは今現在、私たちを取り巻く環境要因ではあるのだけれど――それでも、私たちに何のしがらみもなくなり、またいつかの昔のようにただ同胞たちのみで時を数える日々が訪れたとしても、私たちは変わりはしない。少なくとも私は拒み続けるだろう。お前が夏の空よりも大いなる勇気をもって伸ばす手を、私はすがるよりも愛おしんではねのけよう。その時お前は傷ついた目をするのだろうけれど。
 お前に言ったことはなかっただろうか。私は利己的なんだよ。同胞たちの中で一番ね。証拠に、普段はお前の痛みを軽くする術を模索しているにも関わらず決して裏切るわけにはいかない私自身の願いを守るためならお前を傷つけることになんら躊躇はないんだ。
 私と天后が若菜のために採ってきた山百合のことを覚えているか? 安倍の家の庭に植えた百合を見て顔をほころばせた若菜のことを、未だにはっきり覚えているよ。けれど、もう若菜はいない。百合だけが残り、残って咲き続けると思っていた――けれど気づいたんだ、百合だっていつか枯れるんだよ。季節がくる度に、花開き、風を香に染め、そして散り、いつか咲くこともなくなるんだ。そしてもっと短いひと季節だけを切り取れば、美しく咲いて、そしてただ散る。晴明が言っていたな。変わらぬものなどないと。我ら十二神将とて同じ――変わらぬものなど、ないのだと。お前自身が一番いい例だ。だからこそ、気づいたんだよ。
 咲いた花なら、散らねばならぬ。
 らしくないとお前は笑うかもしれない。考えすぎだと呆れるかもしれない。けれど私はお前自身が立証してしまったこの事実から、もう逃れることなどできない。
 昇った日が沈みゆくように。満ちた月が欠けゆくように。生まれた命が死にゆくように。もっとも激しく、完璧で、美しいその一瞬が終わってしまった後は。分かるだろう? たくさんの未来があるな、けれど無限とも思えるほど細分化したそれぞれの道は結局どれもこれも避けたかったはずの一点にまた繋がるんだ。けれど今のままならば。昇ることも満ちることも咲くことも生まれることもないままならば。それでも、やがてさらぬ時は来るのだろうけれど、その時はずっとずっと後になる。何より少なくともこの感情は死なずにすむだろう。ただ連綿と紡いでゆくだけの友情の中に、今のまま丁寧に隠しておけば、少なくとも私の中でこれは勝手に生き続ける。何もせずとも終わるかもしれないと、お前は私を咎めるだろう。だからここに誓約しよう。終わらないよ。終わるわけがない。生まれて初めてかたちにすることすら恐れるほどに大事にしたいと思ったんだ。歪んでいると分かっている。終わらないものは正しくない。けれども歪んだものは歪んだまま、結ばれて正すことがなければ終わることもないだろう?
 お前はきっと顔をしかめて一言「ばかが」と言い捨てるだろう。そして私は微笑みながら頷いて、やはりその手を拒むだろう。
 よくお前のことをへたれだの甲斐性なしだのもっとしっかりしろだの好き勝手言い放っているけれど、なんのことはない、本当に臆病なのは私の方さ。お前は関係を変えてなお永遠に続いていけると、まっすぐに信じているのだから。それをどうこう言うつもりはないよ。それだってひとつの真実かもしれない。私の真実と相入れることができないだけで。
 今のままでいいんだ。心が一つ、私の中でたゆたいながらただ存在している。私とお前は変わらずに友情で結ばれて触れることも離れることもない。互いの熱に気づきながら目を背けて、ただ時折叶えたくて叶わない願いに胸の内が焼き切れてしまうほど焦心し。それだけで私は不自然なほど幸せなんだ。本当はお前が欲しくて欲しくて、泣き叫びたいほどに欲しくてたまらないけれど。それでもどうしようもなく幸福なんだ。常立の心が私の中で根付いて脈動している。それだけで。





咲いた花なら散らねばならぬ
(だから咲かずに、散らないままに)

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碧波 琉(あおば りゅう)
少年陰陽師・紅勾を中心に絶えず何かしら萌えor燃えている学生。
楽観主義者。突っ込み役。言葉選ばなさに定評がある。
ひとつに熱中すると他の事が目に入らない手につかない。

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