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Be praying. Be praying. Be praying.
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FFCCEoT、シェルロッタ。
タイトルまでのワンシーン。
シェルロッタはマジで主人公のことが好きだったんだよなぁ。

でもシェルロッタと主人公の関係性に、つい紅蓮と昌浩の関係性を重ねた。
いやだって、…似てるんだもん。

 ぐっかー、と、心底幸せそうに深く眠る少女を慈愛の籠る眼差しで見つめたシェルロッタは、やれやれと言いたげに首を傾げた。ひょん、と黒い尾が左右に揺れる。

「もう大人だというのにな…」

 少女のこういうところは昔から変わらない。くたくたになるまで外で遊びまわり、時には服を汚し膝や肘を擦り剥きながらも心底満足そうな顔で帰ってきてはシェルロッタに苦い顔をさせた。長じて外の世界を知った少女に、おそらく『外』は見知らぬもので溢れ、キラキラしたものとして映っただろう。ケアルで癒した、まだ皮膚の薄い何箇所もを何でもないと笑い飛ばして、外での冒険がいかに楽しかったかを、昔と全く変わらぬ活き活きとした表情で細やかに語った食事中の様子を思い出す。

(まったく、せっかく成人の儀も済んだというのに、本当に何も変わらないんだから)

 儀式がひとつ済んだからと言って直ぐに大人らしく振舞うようになるのは、それはそれで違和感であるし寂しいけれども。もう少し思慮深くなって欲しい思いといつまでも子供のように全てに対して素直であり続けて欲しい思いとがシェルロッタの中には静かに同居している。

 それにしても、とシェルロッタは少女の寝顔を覗きこんだ。

(……大きく、なったな)

 つい最近まで、自分の小さな両腕にすっぽりと収まってしまう赤子でしかなかったのに。そう言えばぐっすり眠るくせに夜泣きの酷い子だった。どうしていいか分からず慌てふためいて、子育て経験者にヘルプを求めたあの日はどこか遠く、穏やかに懐かしい。
 小さな赤子だった。小さな子供だった。それでもこの村で唯一ありのままの生をつなぐ少女は見る間に大きくなり、少しずつ自分の外見に背丈に近づき、ついに追い越してしまった。もう少女の目線はシェルロッタよりも高い。
 いつか本当のことを教えねばならないだろう。クリスタルのことも含めて、全てを。表立って問い詰めてきたことこそないが、少女は常に疑問に思っているはずだ。――何故この村において、年を重ねるのが少女とノルシュターレンのみであるのか。
 教えなければならない、それは分かっている。
 けれど――これは、利己だろうか。

 まだ何も知らない少女と、もう少しだけ穏やかに過ごしたい。

 二千年という途方もない時のなかで、やっと手が届いた唯一だから。
 いつか少女はシェルロッタを置いていくのだろう。否応なく重ねた二千もの年と比べたら、少女の歩むだろう年は本当に本当に些細だ。
 だからそれまで。その時まで。いつか頃合いを見計らって真実を教えるとしても、それでもどうにか傍にいてもらって、帰ってきてもらって、少女が静かにねむるまで、ただただこの村で皆と共に平和に――


「――――っ!?」


 唐突に、心臓が不自然に跳ね上がった。
 力の解放を無理強いされる困苦。吸い込んだ息が肺に届かず喉を短く鳴らす。全身を駆け抜ける倦怠感のままに膝を付き、胸を片手で押さえつけてどうにか鼓動を宥めようとする。息苦しさに涙が溢れそうになった。
 シェルロッタは緩慢に、ぐっすりと眠り続ける少女を見た。何も知らない幸せそうな寝顔。いつも通りの明日が来ることを疑わない――
 シェルロッタの喉がのけぞる。声にならない悲鳴が唇だけを震わせた。

(…どうし、て)

 ひとつの可能性、おそらく最も事実に近いだろう可能性に思い至り、彼女は綺麗な顔を歪ませた。苦しみだけではない、何故、と泣きたげに。
 どうして、今なのだ?
 どうして、この子が生きている、今?

 意識の限界が訪れ、世界が不意に暗くなる。
 彼の老人の硬骨な笑みを思い出し、胃液ごと吐き出したいほどの嫌悪感に襲われた。


 二千年の間、シェルロッタが願ったことはたったふたつしかなかった。
 ひとつは死。
 もうひとつは、少女と送る平凡でありきたりでどこにでも転がっている、日常――



 私はあの子が幸せに過ごしていればそれでよかったのに。
 最もつらい役目を押し付けることになるだろうと、彼女はこの時から分かっていた。







 私を殺せなんて、あの子を傷つけてしまう願いを抱きたくはなかったのに。

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碧波 琉(あおば りゅう)
少年陰陽師・紅勾を中心に絶えず何かしら萌えor燃えている学生。
楽観主義者。突っ込み役。言葉選ばなさに定評がある。
ひとつに熱中すると他の事が目に入らない手につかない。

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