Be praying. Be praying. Be praying.
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ちょっとリハビリがてらに小話投下。
TOAです少年陰陽師じゃありませんごめんなさい。
TOA、ルク←ティア。追悼になるかな?
ごっつEDネタバレなんでアニメ派さんは要注意。
TOAです少年陰陽師じゃありませんごめんなさい。
TOA、ルク←ティア。追悼になるかな?
ごっつEDネタバレなんでアニメ派さんは要注意。
空って綺麗だよなー。音譜帯がきらきらしてさ。
なんか、生きてる実感、っつーの?
世界と引き換えに逃れられない死を背負ったあの子は、確かに言葉通りに煌めく音譜帯がはっきりと見える青空を泣きそうな顔で見上げながら笑っていた。
そこに溶ける未来を知ってからも、同じように、綺麗に、笑っていた。
吹き上げた風が群生しているセレニアの花弁を揺らし、ティアの髪もそれに合わせて踊る。乱れる髪を右手で押えて、ティアは空を見上げた。昨日降った雨のせいだろう、余計なごみが殆どない空は眼を射る青色を鮮明に届けてくる。その奥に散らばる煌めきを認めてティアは目を細めた。
刹那、耳に届く幻聴。いつか聞いた声と言葉、付随する笑顔は今の彼女には痛みでしかない。
生きてる実感、つーの?
死の間際になって初めて生きた、たった七歳のレプリカドール。
「ルー、ク」
呟いた声は震えてはいなかった。ただ、かすれていた。
「ルーク」
二度目。締め付けられる胸の奥に後悔ばかりが蘇る。
「ルーク」
三度目。ルーク。ルーク。ルーク。歌姫は狂ったように愛しいレプリカの名を呟き続けた。否、確かに彼女の心は、ある種いびつに、壊れていた。
約束をした。約束。戻ってくるよ、ルークは笑った。ただそれだけが支えだった、死んでいない、だって約束してくれた、だから生きてる。彼は生きている。そう思って救われたかったのは彼を見殺しにした自分自身。そして帰ってきたアッシュに覚えたどうしようもない絶望。アッシュが悪いわけではないことは分かっていた。ナタリアに向けて本心からよかったわねと言える自信もある。けれどそれとこれとは別物で、ティアが帰ってきてほしかったのはルークだった。
あの、優しかった、強かった、脆かった、純粋だった、七歳の子供。
第七音素の塊だった彼は、第七音素に還った。それが全て。
セレニアの花は、嫌いな花になった。彼と初めて会話した時、彼がやりなおしたとき、そして彼が本当の意味で消えた時、いつも彼とティアの傍で揺れていた真白の花びら。
ねえルーク、貴方が言ったとおり確かに今日の空も綺麗よ。音譜帯も輝いて、このなかに貴方はいるのかしら。
ねえルーク、そこから私は見える? 地上は見える? ここから見た空のように、そこから見たここは、綺麗かしら。綺麗ならいいわ、そこが貴方がもう傷つかない楽園ならいい。
貴方を傷つけ続けた罪人の全てを笑って赦してあまつさえ求めてくれた愛しい人。それとも貴方がもういないことが罰? だったら貴方はばかよ。自分が死んだら意味がないじゃない、愚かな私を指差して笑ってくれないと罰を与える意味がないのに。
―――優しいのね。それとも、甘いのかしら。
いつかルークに言った言葉を思い出してティアはそうよと頷いた。そうよ、貴方は甘かった。誰にも甘えないくせに、世界のすべてに甘かった。
――― トゥエ レイ ズェ クロア リュオ トゥエ ズェ ―――……
空に歌姫の声が溶ける。ユリアの大譜歌が震えた旋律で風に乗って大気に散る。
ルーク、ルーク、私の声は届いている?
貴方が綺麗だと言ってくれた私の歌は、空の向こうの貴方に届いている?
忘れない決して忘れたくない、忘れたい忘れられるはずがない、ティアにたくさんの幸せな痛みを投げつけて消えた恋しい人!
――― レイ ヴァ ネゥ クロア トゥエ レイ レイ ―――……
第七譜歌が終わる。
歌姫は泣いた。
最愛の兄も、恋しい子供も喪って、壊れた歌姫は空を仰いで頬を濡らした。
貴方が綺麗と笑った空を見上げて
貴方のいない地上で私は歌っている。
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