Be praying. Be praying. Be praying.
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いやでも、最近可愛め姐さんがマイブームなうえに少女漫画を一気に15冊くらい読んだらまぁこうなると思うんだ。
夜に、二人で安倍の屋根の上にでもいて話してたら、なんか急に姐さんのスイッチ入っちゃったよ、的な話?
夜に、二人で安倍の屋根の上にでもいて話してたら、なんか急に姐さんのスイッチ入っちゃったよ、的な話?
普段とは違う。何が。すべてがだ。たとえば昼日中軽口を叩いている時、たとえば第三者が傍にいる時、たとえば戦闘中。勾陣は決して彼をこんな風には意識しない。普段、紅蓮の隣はただ居心地がいいだけの場所で、紅蓮は何の気兼ねもなく言葉を交わせる相手なのだ。
それがどうして、ある一定の条件が揃っただけで、何もかもが一変する。
そう、そうだ、まず空気が違う。静かな月明かりと、優しい星影と、清廉な夜闇の織り成す芳醇なほの甘さ。少しずつ胸にたまり、ついには息苦しさから呼吸の方法を忘れる。二人なのだと、どうしようもなく思う。騰蛇が隣にいるのだと。当たり前のことだ。いつものこと。それがどうしてずしんと自分という存在の中核に圧し掛かる。
「それでな、勾……」
名前を呼ばれる、それだけで軽く眩暈がした。らしくない。本当に、私はどうしてしまったのだろう。
これが初めてではなかった。今までにも何度か、こんな、ぐしゃぐしゃと濃厚な思いに駆られることがあった。存在を意識して身が硬くなり、今までどんな会話をしていたのかが分からなくなる。ぽっかりと、身体の中から色々なものが抜け落ちて、空いた場所すべてが紅蓮と言う存在で埋め尽くされるのだ。
気まぐれで背を合わせるかたちで腰を下ろした自分に感謝した。……それでも、少し、やはり隣か前にいて、顔が見えていた方が良かったかもしれない、なんてことを考える。
「…………勾?」
「…ん、どうかしたか?」
探るような声で呼ばれて、喉に曖昧な輪郭の感情が詰まっていたから返すまでに少しだけ間が空いた。たぶん、不自然な間ではなかったと、思う。――そうであればいいな、とも。
「いや、こう……なんとなく、普段と様子が違うから、どうしたかなと」
身が強張った。――気づかれていた。
とめどなく後悔によく似たものが脈動と共に全身を満たす。口の中が乾いていく。水が飲みたい、と思った。
「…そう、か?」
「あ、…ああ。ほら、今も。間が空いた」
声が上ずらないように気を付けたら、どうしても不自然に間が開く。
そっと肩越しに、ほんの少し、振り返る。と言っても、視線を動かしてみたくらいだけれど。紅蓮は真っ直ぐ前、少し斜め上を見ていて、当然ながらどんな顔をしているのかは分からない。見たいなと思った。声音が柔らかいから、微笑んでくらい、いるだろうか。視界を映す紅の髪はとても綺麗なのだが、今は蜂蜜色の目を確かめたいと不満に思った。
「俺、何かしたか?」
いいや。
咄嗟に声を上げそうになって、寸前で、確かに今の自分がおかしいのは彼のせいなのだと理解する。
「……分からない」
だから一言、それだけ返した。
「ただ」
ゆっくり続ける。噛みしめ確かめるように。それ程いっぱいいっぱいな状態なのだと、頭の片隅、まだかろうじて冷静で客体視可能な部分が呆れ気味に息を吐いた。
「こうして、夜に、な。お前と二人でいると、時々、息苦しくなる」
俯いて、置いた手のあたりを見た。
「…指先が、震えて」
目を閉じる。
「頬が、熱い」
背後の気配に集中する。体内ではっきりと響く音がある。
「……心の臓が、痛い」
静寂、降りしきる天上の淡光と慄くように全身を包む夜のにおい。控えめに触れ合う背から確かに紅蓮を感じ、そしてやはり、二人なのだなとぼんやり思う。
ふと、紅蓮が離れた。
反射のように振り返る。名残惜しかったのか、寂しかったのか、不審に思っただけだったのか。振り返った途端に、見たかった蜂蜜色とかち合って、答えを導きだす余裕はなくなっていた。
「騰蛇? どうした?」
尋ねかける。声は震えなかったと思う。
彼は心底嬉しそうに目を細めた。
「ん、いや。……俺もだ。同じだな」
だから、ちょっと驚いた。
そう言って、紅蓮はついと右手を伸ばし、勾陣の左手首に触れた。慄き咄嗟に引いてしまいそうだったのをどうにか堪える。ほら、なんて言われても、分からない。その部分だけ感覚が麻痺したように。
ただ、毒気なく笑う深い蜜色を、ひとつ、ふたつ、みっつ、それ以上見ていられなくなって、ふいと、逸らした。
それがどうして、ある一定の条件が揃っただけで、何もかもが一変する。
そう、そうだ、まず空気が違う。静かな月明かりと、優しい星影と、清廉な夜闇の織り成す芳醇なほの甘さ。少しずつ胸にたまり、ついには息苦しさから呼吸の方法を忘れる。二人なのだと、どうしようもなく思う。騰蛇が隣にいるのだと。当たり前のことだ。いつものこと。それがどうしてずしんと自分という存在の中核に圧し掛かる。
「それでな、勾……」
名前を呼ばれる、それだけで軽く眩暈がした。らしくない。本当に、私はどうしてしまったのだろう。
これが初めてではなかった。今までにも何度か、こんな、ぐしゃぐしゃと濃厚な思いに駆られることがあった。存在を意識して身が硬くなり、今までどんな会話をしていたのかが分からなくなる。ぽっかりと、身体の中から色々なものが抜け落ちて、空いた場所すべてが紅蓮と言う存在で埋め尽くされるのだ。
気まぐれで背を合わせるかたちで腰を下ろした自分に感謝した。……それでも、少し、やはり隣か前にいて、顔が見えていた方が良かったかもしれない、なんてことを考える。
「…………勾?」
「…ん、どうかしたか?」
探るような声で呼ばれて、喉に曖昧な輪郭の感情が詰まっていたから返すまでに少しだけ間が空いた。たぶん、不自然な間ではなかったと、思う。――そうであればいいな、とも。
「いや、こう……なんとなく、普段と様子が違うから、どうしたかなと」
身が強張った。――気づかれていた。
とめどなく後悔によく似たものが脈動と共に全身を満たす。口の中が乾いていく。水が飲みたい、と思った。
「…そう、か?」
「あ、…ああ。ほら、今も。間が空いた」
声が上ずらないように気を付けたら、どうしても不自然に間が開く。
そっと肩越しに、ほんの少し、振り返る。と言っても、視線を動かしてみたくらいだけれど。紅蓮は真っ直ぐ前、少し斜め上を見ていて、当然ながらどんな顔をしているのかは分からない。見たいなと思った。声音が柔らかいから、微笑んでくらい、いるだろうか。視界を映す紅の髪はとても綺麗なのだが、今は蜂蜜色の目を確かめたいと不満に思った。
「俺、何かしたか?」
いいや。
咄嗟に声を上げそうになって、寸前で、確かに今の自分がおかしいのは彼のせいなのだと理解する。
「……分からない」
だから一言、それだけ返した。
「ただ」
ゆっくり続ける。噛みしめ確かめるように。それ程いっぱいいっぱいな状態なのだと、頭の片隅、まだかろうじて冷静で客体視可能な部分が呆れ気味に息を吐いた。
「こうして、夜に、な。お前と二人でいると、時々、息苦しくなる」
俯いて、置いた手のあたりを見た。
「…指先が、震えて」
目を閉じる。
「頬が、熱い」
背後の気配に集中する。体内ではっきりと響く音がある。
「……心の臓が、痛い」
静寂、降りしきる天上の淡光と慄くように全身を包む夜のにおい。控えめに触れ合う背から確かに紅蓮を感じ、そしてやはり、二人なのだなとぼんやり思う。
ふと、紅蓮が離れた。
反射のように振り返る。名残惜しかったのか、寂しかったのか、不審に思っただけだったのか。振り返った途端に、見たかった蜂蜜色とかち合って、答えを導きだす余裕はなくなっていた。
「騰蛇? どうした?」
尋ねかける。声は震えなかったと思う。
彼は心底嬉しそうに目を細めた。
「ん、いや。……俺もだ。同じだな」
だから、ちょっと驚いた。
そう言って、紅蓮はついと右手を伸ばし、勾陣の左手首に触れた。慄き咄嗟に引いてしまいそうだったのをどうにか堪える。ほら、なんて言われても、分からない。その部分だけ感覚が麻痺したように。
ただ、毒気なく笑う深い蜜色を、ひとつ、ふたつ、みっつ、それ以上見ていられなくなって、ふいと、逸らした。
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