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Be praying. Be praying. Be praying.
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 紅蓮は寛容なたちではあるが、それでもへたれだの甲斐性なしだの面倒くさいだの好き放題な言い分に嫌味の一つでも返してやりたい気分になることもある。
「……だったら他の男を探せばいいだろ、俺は別に応援するぞ」
 不機嫌も顕わな紅蓮の声に、ここで慌てて弁解するくらいの可愛げがあればいいものを、勾陣はまじまじと彼を見つめてため息交じりの呆れ顔だ。
「拗ねたか?」
 そして悪びれもせず返ってくるのはそんな言葉で、紅蓮は思わず半眼になる。別に傷つけたいとかいうつもりではなかったが(半分嘘、喧嘩上等、くらいの心持ちはあった)、もうちょっとこう、反応の仕方というものがあると思う。
「別に」
「はいはい」
 あからさまにあやすための手が頭上に伸びてきて、紅蓮は無造作にそれを払った。
 勾陣は紅蓮に対して容赦がない、と言うか遠慮がない。それは言葉だったり動作だったり端々に現れて、自分で求めて共に歩むことを決めた相手によくもそこまで、と紅蓮はたまに怒るを通り越して感心する。今更、たとえば天一のように大事に大事に扱ってこられても、天后のようにおどおどとこちらを気にかけてきても、それはそれで気味が悪いが。むしろそんな勾陣はありえなさすぎて想像力が拒否をする。
 だからと言っていつもいつも受け流せるほど紅蓮の器は大きくない。
 仏頂面を崩さない紅蓮に、勾陣はもうひとつ息を吐き出して肩をすくめた。
「分かった、騰蛇、悪かったよ。言い過ぎた」
 引き際が上手いあたり彼女はずるい。普段ならこれでこの話は終いだ。けれど今日はそんな気分にもなれず、紅蓮は黙ったままカップを傾ける。ローテーブルに中身が三分の一ほどの状態で放置していたブラックコーヒーは冷め切っていたく不味い。
 みっつめの溜息はひどく静かだった。ソファの隣で彼女が座りなおして深く凭れた気配がする。もしや渋い顔でもしているのかと目線だけでちらりと見やったがその横顔はいつも通りに涼しげだ。
 視線に気づいたのか勾陣がこちらを見てきたので慌てて外した。自分はいま怒っているのである。
「……残念なことに、私は男の趣味が最悪でね」
 ソファから立ち上がり、勾陣は静かな声でそんなことを言いながら紅蓮の手からひょいとカップを奪った。何を、と思わず顔を上げると、彼女は少し困ったように綺麗な微笑を湛えていて開きかけた口が思わず凍る。
「へたれでも甲斐性なしでも面倒でも何でも、お前以外はいらないんだからまったく我ながら救われないな」
 続いた声に全身と思考まで凍った。
 そのまま台所へと消えた勾陣だったが、やがて湯気を立てるカップを両手に戻ってくる。紅蓮の分を彼の前のテーブルに置き、彼女自身は先ほどまでと同じように紅蓮の左隣20cmに収まった。
 ゆらゆらする湯気をしばし見つめていた紅蓮はおもむろに口を開いた。
「……おい、勾」
 声は自分で意識したより低い。
「なんだったんだ、あの台詞は」
「ん? 誰かさんがへそを曲げたままだったから。一種のサービスだな」
「サービスって、お前」
「嘘で口説き文句なんか口にしないから安心しろ」
 サービスだろうと口説き文句だろうと内容はともかく言い回しがどこかおかしかった気がする紅蓮だが、それを突っ込もうと隣の彼女へ首を巡らせたところで、勾陣がくつりとのどの奥で笑った音に毒気を抜かれてしまった。
 あとは不機嫌を維持するのも面倒になる。かすかな釈然としなさが名残惜しそうに紅蓮の中に留まっているくらいだ。
 大きく息を吐いてカップに口をつける。砂糖が入っていてほどよく甘い。
「騰蛇、サービスついでだ」
「ん?」
 テーブルの上にまだ湯気を立てているカップを置き、脚は組んでいたのを解いて勾陣は半身を紅蓮に向ける。ソファがほんの少しだけ揺れた。
 そして彼女は恥じらう様子も照れる様子も躊躇う様子も一切なく真顔で告げる。
「千年一緒にいるんだ。そういうところまで含めて好きなんだと、それくらい分かれ」
 いくら私たちでも千年はそれなりに長いぞと彼女は微笑み、硬直した紅蓮をまじまじと見てまた笑う。
 あぁもう敵わない。紅蓮はつられてぎこちなく目尻と頬を緩めた。

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碧波 琉(あおば りゅう)
少年陰陽師・紅勾を中心に絶えず何かしら萌えor燃えている学生。
楽観主義者。突っ込み役。言葉選ばなさに定評がある。
ひとつに熱中すると他の事が目に入らない手につかない。

今萌えてるもの
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