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Be praying. Be praying. Be praying.
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少年陰陽師・益←斎。パラレル。斎中学生くらいで。
もはやオリジナルでやれの域。でもやる。

現パロとパラレルの区別が時々面倒くさいです。
取り敢えず当サイトにおいては、現パロ=公式現代パラレル準拠。
例え現代日本が舞台でも、準拠してなかったらパラレルってことで。





頑張ってDVD借りたりしてRAPに萌えてます。やっぱり青すみやばい好みすぎる。青島くんは絶対遊び人で変態だと思うんです(←)でもすみれさんに対してだけ本気すぎて身動きできない状況だと思うんです。遊び人が一人に対してだけ本気なのは大好き。
書きたいけどな……半生くらいなら大丈夫だよねぇきっと。

 がらんがらんと派手な音がして黒い缶が転がり出てきた。おつり30円を財布に入れてから取り出す。冷たい。水滴が手についた。
「あれ、コーヒー?」
「おっとなー」
 珍しがるように、面白がるように、友人たちが囃し立てる。斎はいつも通りの薄いリアクションで――いまいち大人びすぎている性格の斎を、友人たちはマイペースと評しあまり気にしていないようだ――首を振った。プルタブを開ける。予想していた香りはなかった。
「なんとなく」
 恐る恐る口を付ける。あまりいい予感はしなかった。
「……苦い」
 呟いて顔をしかめた。こういう予想はたいてい、当たる。

「でさ、斎は好きな人いるの?」
 中学生女子の話題は気を抜いたらすぐ恋愛方向に走る。広がることを承知で秘密を話してみたり、どこからか手に入れてきた情報を流してみたり。秘密を売買をしている気分になることがある。
 売買している以上、望まずとも手に入れた情報の代わりに自分の情報を流さなければならない。たとえば今好きな人とか、昔好きだった人とか、誰が誰を好きだとか。経験値がゼロで情報を持たない人は取り敢えず驚いておけばお代としては成立する。しかし残念ながら斎は売人たちの満足するリアクションは返せない。
「いる」
 だから詮索を承知でこう応えるほかなかった。
「誰?」
 好奇心にまみれた声を聞きながら、もう一度缶の中身を飲んだ。やはり、苦い。
「みんなの知らない人」
「えー、つまんない。じゃあどんな人?」

 彼の姿を脳裏に浮かべてみた。斎よりずっと高い位置にある精悍な顔立ち。それが斎の視線に気づいてふっと下を向く仕草が好きだ。ごつごつとした指先が何か作業――何でもいい、書きものをしていたり本の頁を繰っていたり、今斎が持っているのと同じ缶のプルタブを開けたり――するのが、色気があって綺麗だと思う。襟ぐりの大きく開いたTシャツから覗く鎖骨も。生真面目な顔立ちと雰囲気を持つくせにどこか柳のようなところがあって、けれどもやっぱり律儀で、阿曇と結託して彼を困らせたときの彼の表情は見ていて飽きない。
 でも、どうしたって覆せない、一番好きな瞬間の彼がいたりする。

 飲み口に鼻を近づけ、すん、と息を吸う。斎の好きな優しい香りがしない。
「名前はー?」
「……言わなきゃいけない…、か?」
 言ってしまうのは、宝箱の中身を見せてしまうようで、少し惜しい気がした。けれども尋ねたことは間違いだったのだろう。だんまりを決め込めばよかったのだ。友人たちは好奇心旺盛に笑いながら斎の言葉を待っている。

 彼はよくコーヒーを飲んでいる。ブラックコーヒーを飲みながら斎と些細なことを話す。彼は斎の話を聞きたがった。学校で。友達が。先生が。授業中に。休み時間に。彼はいつも「それから?」と、伝える価値もないほど取りとめのない話題たちを斎から引っ張り出して微笑む。近くに座っているから、その時、彼のコーヒーの香りは斎まで届く。夜を溶かしこんだ液体は、彼の声と溶け合ってひどく優しい香をいつも運んでくれた。オレンジがかった電飾の光さえ柔らかく優しく思えて、あとあと考えてみれば本当にどうでも良くて笑いたくなるくらいどうでもいい話もついつい話したりする。
 彼はいつも、斎の話を最後まで満足そうに聞いてくれる。
 その時の表情が溶けそうなほど柔らかくて、一番、好きだ。

 体の向きを変えて言った。
「秘密。言いたくない」
 遅すぎる黙秘権行使に、友人たちから非難の声が上がるが、宝箱をあけっぴろげにはしたくない気持ちの強さが彼女らの言葉を脳まで届けなかった。
 秘密の売買はあまりしない主義なのだ。今決めた。

 彼と斎の間にはたくさんの『差』がある。完全に埋まることはない差。たとえば、40cm近い身長差。10歳近くの年齢差。背伸びをしても、届かなくて、もどかしくて、手を伸ばしてみるけれどそれでも届かなくて。たぶん死ぬまでその差は埋まらなくて、彼が手を伸ばしてくれない限りこの手は決して届かないのだろう。それでも、少しだけでも近付いた気分になりたくて、こうしてブラックコーヒーを買ったりする。そして背伸びを痛感するのだ。舌の上を滑っていく苦みを美味しいとは思えなかった。悔しい。意外に美味しい、なんて思えたら、きっと一歩、近づけたのに。
 コーヒーは、嫌い、かもしれない。
 ただ、彼が……益荒が飲んでいるあれは、好きだ。
 友人たちに対して頑なに「秘密」と言っているからだろうか。心の中で呟いただけの彼の名前が、なんだかとても眩しい気がして、心が少しはねた。

「じゃあさー、一言! どんなひと?」
 諦めきれない様子の友人たちに若干呆れつつ、身勝手だが、今度は言ってしまいたくなって、少し笑って答えた。
「……ブラックコーヒーが好きな人」
 友人たちは、何それ、と言った後、「斎、年上好み?」と言ってきた。自分たちの年齢で年上好みも年下好みもないと思う。
 首を横に振った。
 斎が好きなのは年上の男性ではなく彼であるから。

 今日もきっとたくさんとりとめもない話をする。今の会話は絶対教えてやらないけれど。気恥ずかしい。
 そして彼はブラックコーヒーを飲むだろう。その時頼んでみようか。自分の分も淹れてもらえるように。最初はミルクと砂糖を入れて貰って。この際グラニュー糖と牛乳でもいい。少しずつ、この苦くて不味い飲み物が好きになれたらいいなと思う。
 彼が好きなものを好きになりたい。
 たくさんの埋まらない『差』があっても、これくらいは背伸びをすれば届く些細な『差』だ。それを埋めていくのは、なんだかひどく幸せな気持ちになる。
 ひとまずは手にしているブラックコーヒーを頑張って飲みほした。どうしてこんな飲み物を美味しいなんて言うのか尋ねてみよう。それから、ミルクと砂糖入りのコーヒーを傍において、今日は彼の話をたくさん聞いてみよう。






―――――
益荒と阿曇は従兄妹。彼らと斎は血のつながりのない親戚。
事故かなんかの後遺症で記憶障害を生じてる母親は現在海外で治療中。父親もそれにつき添い。血はつながってないけど親戚、あと住んでる家が近かった、ということで益荒のところに引き取られた。
「お前に任せておけるか」と阿曇がしょっちゅう遊びに来る。
そんなノリで。

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無題
私は琉さんに萌殺されるって信じて疑って ま せ ん 
加月 2010/07/25(Sun)22:31:42 編集
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碧波 琉(あおば りゅう)
少年陰陽師・紅勾を中心に絶えず何かしら萌えor燃えている学生。
楽観主義者。突っ込み役。言葉選ばなさに定評がある。
ひとつに熱中すると他の事が目に入らない手につかない。

今萌えてるもの
・紅勾、青后、勾+后(@少年陰陽師)

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