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Be praying. Be praying. Be praying.
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そこにあるのは、きっと幸いではない。
麻薬的な快楽にふけることを、愚かだとは思わなかった。




紅勾。思いついた奴。
最近紅蓮目線ばっかり書いてる気がする。

駆け引きを書きたかったけどムリだったみたいだよ!(°∀°
紅蓮は本気になればなるほど何も言えなくなるけど本気じゃないポーズが保たれてたら割と何でも言えるような気がする。

「……お前は、どうして俺のことを気にかけてくれる?」
 話題を持て余しての、そしてかねてよりの問いかけだった。いつものように、何をするでもなく、ただなんとなく、邸の屋根に腰かけてぽつぽつと話をしていた。傍らの勾陣は視線を空から紅蓮へ向け、少し困ったように、紅蓮の意図を探るように、微笑んだ。
「どうした? 急にそんなこと」
「いや、ふと、気になった。というより前々からそう思っていたのをいま思い出したんだ」
 きんと透明な冬の空が、他の季節より強く星々を瞬かせることを、紅蓮は知ったのはここ十年ばかりの出来事だ。人界の空――いや、人界どころか、すべての空、どころかあらゆる自然、ひいては世界そのものが、紅蓮にとっては目を向けるべきものではなかった。目を向けることすら知らなかった。紅蓮の、凶将騰蛇の世界はひっそりと閉じていた。紅蓮はそれでいいと思っていたし、紅蓮以外の誰ももそう思っていたはずだ。それが、ある日安倍晴明という例外が現れた。しかし実のところそれより前から勾陣という例外が存在していたことを、紅蓮が知ったのはそれこそここ数年の話である。
 晴明の式に下るか否かの判断を、彼女は実質紅蓮に委ねたということを耳にしたとき、紅蓮は初めて勾陣を認識した。彼女の存在は知識や景色ではなく、輪郭を持つ実体となった。そうして顕わになったのは勾陣が紅蓮に向けているらしい興味やそれに準じる何かしらの感情だった。道反の一軒があるまではちょっかいをかけに来たし、件の事件の渦中には暴走した紅蓮を数多の傷と引き換えに留め、その後は半狂乱の彼を鮮やかな平手で現実へ引きとどめ、彼の願いを怒りを表しながらも受け入れた、そして自ら世界との断絶を望んだ紅蓮をそれは許さないと言うように時折黙って傍に来ては何をするでもなくただ寄り添った、しかし昌浩が生まれてからはまたちょっかいをかけに来るようになった。そのすべてが、紅蓮には不可解でならない。それだけの労力を彼に使って勾陣に何の益があるというのだ。話し相手が欲しいのならば彼女にはもう天后がいるのに。
「どうして、と言われても」
 勾陣は口元に指を添え眉を潜める。答えを探すようにまじまじと眺められて、紅蓮は尋ねておきながら居心地の悪さを味わった。
 やがて勾陣はなんでもないようなそぶりで、
「私はお前が怖くないから……かな」
 と言った。紅蓮としては不満な答えだが、どうやらそれが顔に表れたらしい。勾陣は小さく笑声を零して「納得できないようだな」と紅蓮の内心を読み上げた。
「そりゃ…俺を怖がらないだけなら、他にも何人かいるからな」
「そう言われても。そうなると後は単純に興味だぞ」
「……本人目の前にして興味とか言うか」
「間接的に言わせたのはお前だろう、騰蛇」
 うまい切り返しが思いつかずに言いよどむ。だが、おかしそうに吐息を零す勾陣にむっとして、嫌味半分いじけ半分で声を上げた。
「……なら、いまお前が俺と話しているのも興味なのか?」
 だが、それもあえなくかわされる。
「こら、騰蛇、拗ねるな」
「誰が」
「私を誤魔化し切れるかどうか、自分がいちばん分かっているだろう。それに、ほら、その言い方だって、まるで子供だ。昌浩といるうちに精神年齢まで影響を受けたか?」
「…勾」
 声を低くして名を呼ぶと、堪えた様子もなく勾陣は肩をすくめる。「悪かったよ」そうやってさらりと引き下がる器用さは紅蓮にはないものだ。謝られてしまえばそれ以上何も言えなくなり、紅蓮は言葉をもやもやと抱える羽目になった。興味と一言で言われて、それが気楽でいいと思ったのか、そんな理由かと残念に思ったのか、自分でもよく分からない。
「まあ、そうだな、いまは」
 勾陣は伸ばしていた両脚を曲げて腕で抱え込み、少し背中を丸めて紅蓮を下から覗き込んだ。夜闇よりも深く艶めく黒髪がさらりと揺れる。
「……お前みたいな男は、というよりはお前を、好ましいと思うから、かな」
 情を知る男が好きなんだよ、と勾陣は笑い、紅蓮はその言葉に一瞬呼吸や心鼓に至るまでのすべてを奪われた。絡まりあった視線のその先、水面のような涼やかな相貌の奥に、わずかにくゆる熱を垣間見たような気がして、同じだけの熱が紅蓮に移る。耳の奥で心が高鳴る音が響き、もう一度いましがたの熱を目にしたいとのどを鳴らした――矢先に、少女のような柔らかな微笑は一転し、勾陣は普段通りに挑発的に赤い唇できれいな弧を描いた。
「間抜け面」
 一言言い放ち、後ろ手に体重をかけ片足を投げ出して勾陣はいっそ爽快に告げる。
「期待したか?」
「ばっ……!」
 図星は図星だがまさか頷くわけにもいかない。考える前に口をついた言葉が、紅蓮には珍しくさらさらと続く。
「ばかを言うな。何を言ってるんだこの女はと思っただけだ」
 惹き込まれたのは事実で、期待させるだけの理由を見つけたのも事実ではあるが――いや、それは違うか。見つけたのではない、紅蓮はそれを『知っている』。
「そうか、つまらないな」
「勾こそ何を期待してたんだ」
「決まっているだろう、お前の狼狽える様だ」
 知っている。限りなく『それ』に近い自らの感情と、鏡のように同じだけの鼓動を孕む彼女の感情。どろどろに混ざり合い分かつことなどできないひとつになる日を待ち望む感情に無視を決め込むのは決して悲愴な理由ではなくて、もっと簡潔でくだらない理屈だ。
「つくづくいい性格してるよ、お前は」
「ありがたい言葉だ、一応受け取っておこう」
「……嫌味って知ってるか?」
「いまお前が言ったのがそうだな。私がその程度で堪えるとでも思っているのか」
「堪えるぐらいの可愛げがあればいいなとは思っている」
「そうか、他の女に頼め」
 踏み込むか否か、まさに均衡が崩れるその一瞬、その刹那に互いの熱を確認しあっては睦むよりも突き放す。そうするのは単に楽しいからだ。一種の遊びである。それに、愛を囁くよりは自分たちに相応しいようにも思えた。勾陣が紅蓮を待っているようなら手を伸ばすことを考えもするが、この遊びは始まったときから暗黙の了解を手にしている。そのうち飽きるか物足りなくなれば遊びは終わって観念するのだろうが、いまのところその気配はない。
「というか、勾は俺にだけ無駄に手厳しい。天后と話しているときのお前を見ると別人かと思うくらいだ」
「天后とお前を比べてどうする、それこそ可愛げもないのに」
「……俺に可愛げがあっていいのか」
「…………すまない、私が悪かった。撤回する。想像するだに気持ち悪い」
 のどが爛れてしまうほどに、本音の感情は甘いから。胸焼けしない程度に冗談でくるんでほどほどに楽しむ。それで充分だ。それでも時折辟易するほど濃密なのだから。同じ熱さの感情がある。その事実だけでいい。交わるだけが成就ではなくて、二人の関係はある意味すでに叶っているとさえ言えた。
「…なあ、勾」
「うん?」
 だって、冗談の振りをするだけでこんな言葉もきちんと音になる。
「俺も、まあ、お前のことは結構好きだ」
 勾陣は一瞬だけ目を見開いて、先ほどくゆった瞳の奥の色を紅蓮に見せてくれてから、「結構?」と笑う。紅蓮は軽く両手を掲げ、その部分だけを撤回した。

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碧波 琉(あおば りゅう)
少年陰陽師・紅勾を中心に絶えず何かしら萌えor燃えている学生。
楽観主義者。突っ込み役。言葉選ばなさに定評がある。
ひとつに熱中すると他の事が目に入らない手につかない。

今萌えてるもの
・紅勾、青后、勾+后(@少年陰陽師)

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