Be praying. Be praying. Be praying.
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それでもとここを望み続けた心があった。
少年陰陽師、紅勾。悲恋系? 別れ話注意!
最近電子辞書はネタの宝庫だと気付きました。読んでいくの楽しい。
でもついうっかり授業中に音声流れかけると心臓に悪い。
少年陰陽師、紅勾。悲恋系? 別れ話注意!
最近電子辞書はネタの宝庫だと気付きました。読んでいくの楽しい。
でもついうっかり授業中に音声流れかけると心臓に悪い。
嫌になったわけではないと男は言った。断じて嫌気がさしたわけではないと。お前に飽いたわけではないと。心変わりしたわけではないと。意思の行き違いを案じて幾度も幾度も重ねられた同じ意味合いの言葉を紡いだその口で、けれど男はだから距離を取りたいのだと言った。
先が、見えたんだ。ものすごく非生産的な。このままじゃ互いにとってよくないと、思った。
ぽつぽつと紡がれる音はそれ自体が詫びだった。だから勾陣はそれを黙って受け止めていた。――こんな日が訪れる予感は、ずっとずっと前から心の片隅にあったので、彼女の感情は信じられない程穏やかに凪いでいた。
だから、少し。少しだけ、元の関係に戻りたい。
近すぎず遠すぎずの距離はだからこそ酷く安穏だった。勾陣もそれを今なお色濃く覚えている。曖昧で安穏で、故に手が伸ばせなかった、距離だった。
その距離が心地よすぎたのだ。だのに脱して、そして近づき、行き詰った。幸福感は息苦しく、庇護欲は互いの足枷となる。喜ばれるべき感情の交わりは唾棄すべき未来へ繋がってしまった。だから、やり直し(リセット)を。そして時が来たらもう一度。
……悪い。我が儘だと、分かってはいるんだ。
血を吐くような声で低く詫びる紅蓮に、勾陣は柔く笑いかけた。虚を突かれた紅蓮が勾陣を見つめた。分かった、と女は言った。
嫌い合うわけでもなく、大切に大切に慈しむ心が強く残るからこそ終わる日が来ると、常に心のどこかで思っていた。友情の延長線上に始まった恋はだからこそ友情との境界が曖昧で、故に未だ友情であった心を恋情と勘違いしてしまった。親愛、尊敬、信頼、培われた感情は確かに愛情ではあるが恋情ではなかった。排他性や性的衝動はないに等しく、傍に在ることが喜びで、その喜びすら単なる愛情だった。友情でしかない愛が恋情としての出口を見つけることなど出来るはずもなく、行き詰って途方に暮れて戻しようもないほどに崩れてしまう日が来るだろうことは定まっていた。それに彼は気付いてしまった。だからこそ彼は終わらせたのだ。決定的な日が訪れてしまう前に、自らの手で終わらせてしまえばいいのだと結論を下して。
それでも続いていたいと願う心が勾陣にあった。混じり合った感情は単なる友情でも、勾陣の向ける感情はどうしようもない恋情だった。己が感情を履き違えたのは紅蓮の方だ。だから紅蓮は「二人のため」を謳いながら酷く罪悪感を抱えている。
加え――そう、或いは薄々ながら気付いてしまったのかもしれない。彼は勾陣を選んだわけではなかったことに。紅蓮の傍にいた女で、彼に悪意も敵意も感じず、怯えるわけでもなく、好意的に接していた者が勾陣しかいなかった故の、消去法で形成された想い。狭い世界しか知らない男が初めて触れた異性へのそれを恋情と読み誤ってしまったことは責められるべきでないだろう。――少なくとも勾陣は、そう思っている。私はきっと彼でなくてはならなかった、けれど彼は私でなくともよかったのだ。
困り果てて泣きださんばかりの表情の紅蓮に比べ、勾陣はどこまでも穏やかだった。どうしようもなく、穏やかだった。
そう言えば私がお前に我が儘を言うことは多かったが、お前が私に我が儘を言うのはこれが初めてだな。
取り返しのつかない未来が見えていながらなお続いていたいと愚かに願う心が邪魔をして頷くことは出来なかったが、その一言が諾であると紅蓮なら分かってくれるはずだった。
友情でよかった。この思いがたどり着く場所が用意されているのなら、それは恋でなくてよかった。だから自分たちはいつだって友人だった。口付けを交わしながらも関係性の名前は恋ではなかった。
ずっと、恋ではなかった。
それでもよかったのだ。
You've been a special friend.
(お前はずっと特別な友人だった)
心は酷く、穏やかだった。穏やかでしか在れなかった。他の何が入り込む余裕もなく。
それでも私はお前が好きだったよ。
最後のつもりで呟いた言葉に、紅蓮は何も返してはくれなかった。
先が、見えたんだ。ものすごく非生産的な。このままじゃ互いにとってよくないと、思った。
ぽつぽつと紡がれる音はそれ自体が詫びだった。だから勾陣はそれを黙って受け止めていた。――こんな日が訪れる予感は、ずっとずっと前から心の片隅にあったので、彼女の感情は信じられない程穏やかに凪いでいた。
だから、少し。少しだけ、元の関係に戻りたい。
近すぎず遠すぎずの距離はだからこそ酷く安穏だった。勾陣もそれを今なお色濃く覚えている。曖昧で安穏で、故に手が伸ばせなかった、距離だった。
その距離が心地よすぎたのだ。だのに脱して、そして近づき、行き詰った。幸福感は息苦しく、庇護欲は互いの足枷となる。喜ばれるべき感情の交わりは唾棄すべき未来へ繋がってしまった。だから、やり直し(リセット)を。そして時が来たらもう一度。
……悪い。我が儘だと、分かってはいるんだ。
血を吐くような声で低く詫びる紅蓮に、勾陣は柔く笑いかけた。虚を突かれた紅蓮が勾陣を見つめた。分かった、と女は言った。
嫌い合うわけでもなく、大切に大切に慈しむ心が強く残るからこそ終わる日が来ると、常に心のどこかで思っていた。友情の延長線上に始まった恋はだからこそ友情との境界が曖昧で、故に未だ友情であった心を恋情と勘違いしてしまった。親愛、尊敬、信頼、培われた感情は確かに愛情ではあるが恋情ではなかった。排他性や性的衝動はないに等しく、傍に在ることが喜びで、その喜びすら単なる愛情だった。友情でしかない愛が恋情としての出口を見つけることなど出来るはずもなく、行き詰って途方に暮れて戻しようもないほどに崩れてしまう日が来るだろうことは定まっていた。それに彼は気付いてしまった。だからこそ彼は終わらせたのだ。決定的な日が訪れてしまう前に、自らの手で終わらせてしまえばいいのだと結論を下して。
それでも続いていたいと願う心が勾陣にあった。混じり合った感情は単なる友情でも、勾陣の向ける感情はどうしようもない恋情だった。己が感情を履き違えたのは紅蓮の方だ。だから紅蓮は「二人のため」を謳いながら酷く罪悪感を抱えている。
加え――そう、或いは薄々ながら気付いてしまったのかもしれない。彼は勾陣を選んだわけではなかったことに。紅蓮の傍にいた女で、彼に悪意も敵意も感じず、怯えるわけでもなく、好意的に接していた者が勾陣しかいなかった故の、消去法で形成された想い。狭い世界しか知らない男が初めて触れた異性へのそれを恋情と読み誤ってしまったことは責められるべきでないだろう。――少なくとも勾陣は、そう思っている。私はきっと彼でなくてはならなかった、けれど彼は私でなくともよかったのだ。
困り果てて泣きださんばかりの表情の紅蓮に比べ、勾陣はどこまでも穏やかだった。どうしようもなく、穏やかだった。
そう言えば私がお前に我が儘を言うことは多かったが、お前が私に我が儘を言うのはこれが初めてだな。
取り返しのつかない未来が見えていながらなお続いていたいと愚かに願う心が邪魔をして頷くことは出来なかったが、その一言が諾であると紅蓮なら分かってくれるはずだった。
友情でよかった。この思いがたどり着く場所が用意されているのなら、それは恋でなくてよかった。だから自分たちはいつだって友人だった。口付けを交わしながらも関係性の名前は恋ではなかった。
ずっと、恋ではなかった。
それでもよかったのだ。
You've been a special friend.
(お前はずっと特別な友人だった)
心は酷く、穏やかだった。穏やかでしか在れなかった。他の何が入り込む余裕もなく。
それでも私はお前が好きだったよ。
最後のつもりで呟いた言葉に、紅蓮は何も返してはくれなかった。
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