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Be praying. Be praying. Be praying.
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選択剣道で試合してたらなんとなく、昌浩は武道強いよな絶対とか思った。
ただの面白くも何ともない剣道の練習試合風景的な。文章が書きたかっただけ。
やっぱり経験って大事だよなぁ。

 ぱしん、と剣道場に音が響く。「小手! 小手! 小手えぇえぇ!」と何故か小手ばかり連発してくる試合相手が小手と言いつつ打ってきた面を竹刀で受け止め、昌浩はそのまま軽く間を取った。
「言ってることとやってるもんが違うぞー」
 とのんびりとした教師の声が飛び、
「今の入った入った入った!」
 と相手チームの男子が騒ぎ立てる。いやかすってもないから今の。
 体育の授業の一環である剣道の授業を取っている生徒は男女問わず大抵ずぶの素人で、三日とおかず神将や祖父に鍛えられている昌浩の敵ではない。昌浩がやっているのは合気道(という名の実践武術とでも言った方が正しいのだろうが)で剣道とは別フィールドだが、武道という大きなくくりでは一緒だろうと、専門家に知られたら怒鳴りつけられそうなことを思っている。合気道だろうが竹刀を握り慣れているのは事実なわけであるし。
「小手ぇぇえ!!」
 やはり打ってきた小手を避け、そのままの動きで昌浩は相手に小手を打った。竹刀を構え受けにきた相手に、さらに一歩踏み出した右足を折り僅かに身をかがめるとそのまま竹刀を横一線に振るう。小手胴。
 ぱんと小気味いい音がした。
「胴あり、一本!」
 主審が声を張り上げる。手を休めて審判を見ると、主審・副審計三人ともが赤旗を上げていた。今回は昌浩のチームが赤である。記録係がホワイトボードにドと書いて丸を付けたのを確認して昌浩はよしと軽く息を吐いた。
 初期位置に戻り、互いに構える。
「二本目!」
 主審の合図で試合は再開される。
「小手!」
 ……相変わらず小手オンリーなのは一体何のポリシーあってのことなのだろう。
 竹刀を振り回す勢いで小手ばかりを一気に仕掛けて来られて、終いには竹刀同士の根元で押し合う状態になった。このまま面かな、と思うがタイミングがつかめない。じりじりと睨み合っていたが、不意に相手が放れてかなりの距離を取った。どうするんだろう、と構えていると、何を思ったか竹刀を頭上に振りかぶって突進、床を蹴って飛び「めぇええん!」と竹刀を振り下ろされる。そう来る!? 慌てて竹刀でそれを受け、そのまま相手の竹刀を力任せに弾いた。そう言えば初めて小手以外を仕掛けられた。双方のギャラリーがうおぉと湧く。
 下手に本気を出すと、昌浩の場合授業で習った剣道ではなく鍛えられた実戦用の方が出かねない。練習用の竹刀は軽いが防具で守られた箇所以外を打たれるとかなり痛いのだ。胴打ちの練習の時など、女子より余程力任せに竹刀を奮う男子なので、その痛みはそこそこ悶絶ものである。
 ただ、昌浩の振るう竹刀のスピードはちょっとしたものだ。
 小手を打つ、ふりをする。フェイント。構えようと身を固くした相手の竹刀を力任せに振り落とし、そのまま昌浩は面を打った。
「面!」
 ぱしんと、音がした。打つ寸前相手も竹刀で受けようとした。だが、昌浩の方が早かった。
「面あり!」
 今度は主審と副審一人ずつが赤旗を上げていた。遅れてもう一人の副審も赤旗を上げる。よっしよくやった安倍ー! ナイスー! とギャラリーが湧いた。
「勝負あり!」
 再び初期位置に戻り、蹲踞。収め刀。立ち上がりそのまま五歩後退、軽く礼をして場外に出、再び礼。顔を上げた瞬間から味方側の男子たちがわーわー声を上げた。
「ナイスナイス、いぇー!!」
「今勝ってる勝ってる!」
「次せめて引き分けにしろよ!」
 適当に労われながら甲手と面、面頭巾を取ってようやく一息ついた。剣道場には独特のにおいがこもっているが麻痺した鼻ではそれも感じず、面の中にこもっていた熱気から解放されたことに息を吐く。
「安倍って結構強いよなー」
「あーうん、まぁ。でも皆似たようなもんじゃないの?」
 まさか実践的な武術を手だれたちに鍛えられていますなどとは言えず曖昧に誤魔化す。
 結構強い、というか。授業でかじっただけの素人相手に、いくら勝手がよく分からないからといっても、いくら勝っていると言ってもそこまでの実力差を見せつけるわけでもない今現在の戦績を、もし家人に知られたらまた鍛えられそうだよなぁと昌浩は遠い目をした。自分の試合風景を誰かに見られることなどまずないが。
 いや、て言うか、鍛えられてるのは確かだけれども、結果的に受け身ばかりが鍛えられている感も、無きにしも非ずで。というかじい様や勾陣や紅蓮や六合相手に一本とか取れないし。無理無理。あれ俺の稽古って俺の身にちゃんとなってるのかなぁ。
 今更ながらの疑問を頭の中で反芻していた昌浩は、しかし考えるだけ無駄だと判断し、周りの男子たちと一緒に「今の入った入った入った絶対入った!」と主に審判を惑わすことを目的とした応援を行うことにした。

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碧波 琉(あおば りゅう)
少年陰陽師・紅勾を中心に絶えず何かしら萌えor燃えている学生。
楽観主義者。突っ込み役。言葉選ばなさに定評がある。
ひとつに熱中すると他の事が目に入らない手につかない。

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