Be praying. Be praying. Be praying.
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少年陰陽師、紅→勾。
三度目は冥官がカウントされそうな気もしてる。
そして何で私の書く紅勾はこう、望まない恋とか、消えた方がいい想いとか、そんな方向になってるんだろう。
ふたりを恋愛脳にはしたくないってのが変な方向に横滑ってこうなってるのかなぁ。
3/100消化。
三度目は冥官がカウントされそうな気もしてる。
そして何で私の書く紅勾はこう、望まない恋とか、消えた方がいい想いとか、そんな方向になってるんだろう。
ふたりを恋愛脳にはしたくないってのが変な方向に横滑ってこうなってるのかなぁ。
3/100消化。
一度目は天狐凌壽の時。
二度目は真鉄の時。
『何度も何度も同じことを言うな、物の怪よ』
「誰が物の怪だっ! と言うより、話をはぐらかすな!」
『だから、心配せずとも何も起こっていないよと言っているだろう』
勾陣が呆れと諦観が入り混じった顔で水鏡越しに笑っている。物の怪扱いされた紅蓮、けれど今はばっちり白い異形の姿をとっている彼は憮然と勾陣をにらみつけた。本気ではない視線が勾陣に効くはずもなく、しまいには『過保護すぎるんだ、お前は』とさらに笑われる始末である。
『何度も言うように、大丈夫だ。………ほら、今日はそろそろ切るぞ』
「…あぁ」
物の怪の了承と共に、水鏡の表面がゆらりと揺らめいたかと思えば波の綾が生じ彼女が見えなくなる。ゆらゆらと揺らめく綾を映すだけとなった水鏡に向かって、物の怪は知らないだろうと呟いた。低く、押し殺すような、そしてどこか吐き捨てるようにも思える、うめきに近い呟き。
彼女の面白いほどよく当たる観察眼は、けれど自分および自分に向けられる感情については管轄外のようで、きっと勾陣はどれだけ物の怪が彼女の身を案じているかを分かっていない。
何も映さない水鏡を、物の怪はじっと見つめる。そこに勾陣の残像が見えるかのように。
やがて何かを堪えるように夕焼け色が細くなった。
―――心配しても、しても、し足りるということがない。
裏を返せば、本当は不安でたまらない。だって、もし何かあったとしても、ここからではすぐに馳せ参じるなど出来はしないのだ。
彼女の実力を疑っているわけではない、けれど―――勾陣ほどの実力を持ってしても、彼女に重傷を負わせる相手が存在しうることを思い知らされてしまってからでは、心配するなというほうが無理な相談だった。神気がまだ完全に回復しきっていないだろう今の状況ならなおさらである。
かつての状況を思い出して、胸の奥がつきりと痛む。抜けない棘の名はおそらく恐怖だ。
一度目は天狐凌壽。二度目は真鉄。
あの時届いた声が、あの時届いた手が、もしも今度は届かなかったら? それは決してあり得ない話ではない。確立としては、もしかしたら届く確率よりもそちらのほうが高いかもしれない。傷つけることは助けることよりずっとずっと簡単なのだから。
そして、物の怪はもう一つの事実に気付いてしまっていた。
勾陣と言う存在がどれだけ自分の中で大きいか。どれだけ依存しているか。自分の世界の中の欠けてはならない一部にいつの間にか勾陣が入り込んでいたことに、物の怪は笑える話ながら喪失の瀬戸際になって気がついた。
晴明や昌浩は人間である。だから、その関わりの中に前提条件としていつの日か訪れる離別が存在しているし、物の怪もそれを理解していた。けれど、勾陣は違ったはずだった。いつまでも、当然のように、共に時を刻んでゆける存在、それが勾陣のはずだった。けれど、現実は違った。彼女との関わりだって、訪れるかもしれない今生の別れはどこに待っているのか知れないものだった。
それを、思い知らされた。
その時が来る事をどれほど自分が恐れているのかを、思い知らされた。
そして、何故恐れているのか、その理由までもを。自分が彼女に向けていた感情の名、自分でも気付けないほど微かだったその種はすでに芽吹いて成長を始めている。いつまで押しとどめておけるのかを彼は知らない。いつかきっと、望まれていない花が咲くような気がしていた。
物の怪は目を閉じた。知らず知らずのうちに強張った体をほぐそうと息を吐き出しても、それは沈鬱な溜め息にしかなってくれない。
紅蓮の中での勾陣の立ち位置は、誰より親しいただの同胞でよかったはずだったのに。
それとも。
もしも、思い知らされる前に自力で気付いていたならば。
そうしたら、ここまで想いは育たずに済んでいたのだろうか。
今となっては意味のない仮定を論じて、何かを誤魔化すようにくだらないと物の怪はその尾をひょんと振った。
二度目は真鉄の時。
『何度も何度も同じことを言うな、物の怪よ』
「誰が物の怪だっ! と言うより、話をはぐらかすな!」
『だから、心配せずとも何も起こっていないよと言っているだろう』
勾陣が呆れと諦観が入り混じった顔で水鏡越しに笑っている。物の怪扱いされた紅蓮、けれど今はばっちり白い異形の姿をとっている彼は憮然と勾陣をにらみつけた。本気ではない視線が勾陣に効くはずもなく、しまいには『過保護すぎるんだ、お前は』とさらに笑われる始末である。
『何度も言うように、大丈夫だ。………ほら、今日はそろそろ切るぞ』
「…あぁ」
物の怪の了承と共に、水鏡の表面がゆらりと揺らめいたかと思えば波の綾が生じ彼女が見えなくなる。ゆらゆらと揺らめく綾を映すだけとなった水鏡に向かって、物の怪は知らないだろうと呟いた。低く、押し殺すような、そしてどこか吐き捨てるようにも思える、うめきに近い呟き。
彼女の面白いほどよく当たる観察眼は、けれど自分および自分に向けられる感情については管轄外のようで、きっと勾陣はどれだけ物の怪が彼女の身を案じているかを分かっていない。
何も映さない水鏡を、物の怪はじっと見つめる。そこに勾陣の残像が見えるかのように。
やがて何かを堪えるように夕焼け色が細くなった。
―――心配しても、しても、し足りるということがない。
裏を返せば、本当は不安でたまらない。だって、もし何かあったとしても、ここからではすぐに馳せ参じるなど出来はしないのだ。
彼女の実力を疑っているわけではない、けれど―――勾陣ほどの実力を持ってしても、彼女に重傷を負わせる相手が存在しうることを思い知らされてしまってからでは、心配するなというほうが無理な相談だった。神気がまだ完全に回復しきっていないだろう今の状況ならなおさらである。
かつての状況を思い出して、胸の奥がつきりと痛む。抜けない棘の名はおそらく恐怖だ。
一度目は天狐凌壽。二度目は真鉄。
あの時届いた声が、あの時届いた手が、もしも今度は届かなかったら? それは決してあり得ない話ではない。確立としては、もしかしたら届く確率よりもそちらのほうが高いかもしれない。傷つけることは助けることよりずっとずっと簡単なのだから。
そして、物の怪はもう一つの事実に気付いてしまっていた。
勾陣と言う存在がどれだけ自分の中で大きいか。どれだけ依存しているか。自分の世界の中の欠けてはならない一部にいつの間にか勾陣が入り込んでいたことに、物の怪は笑える話ながら喪失の瀬戸際になって気がついた。
晴明や昌浩は人間である。だから、その関わりの中に前提条件としていつの日か訪れる離別が存在しているし、物の怪もそれを理解していた。けれど、勾陣は違ったはずだった。いつまでも、当然のように、共に時を刻んでゆける存在、それが勾陣のはずだった。けれど、現実は違った。彼女との関わりだって、訪れるかもしれない今生の別れはどこに待っているのか知れないものだった。
それを、思い知らされた。
その時が来る事をどれほど自分が恐れているのかを、思い知らされた。
そして、何故恐れているのか、その理由までもを。自分が彼女に向けていた感情の名、自分でも気付けないほど微かだったその種はすでに芽吹いて成長を始めている。いつまで押しとどめておけるのかを彼は知らない。いつかきっと、望まれていない花が咲くような気がしていた。
物の怪は目を閉じた。知らず知らずのうちに強張った体をほぐそうと息を吐き出しても、それは沈鬱な溜め息にしかなってくれない。
紅蓮の中での勾陣の立ち位置は、誰より親しいただの同胞でよかったはずだったのに。
それとも。
もしも、思い知らされる前に自力で気付いていたならば。
そうしたら、ここまで想いは育たずに済んでいたのだろうか。
今となっては意味のない仮定を論じて、何かを誤魔化すようにくだらないと物の怪はその尾をひょんと振った。
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