Be praying. Be praying. Be praying.
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チャットでのやつ。伊勢31(笑)
オチはない。
オチはない。
む、としかめつらしい顔をして、斎はカップの中のアイスをつつく。口の中に広がる美味に満足しながら、実は内心で少し焦っていた。
キングサイズのアイスクリームはキングの名を冠しているだけあって想像以上にボリュームがあった。プラス、キッズサイズと言えどもそこそこの大きさのアイスとのダブルだ。食べれないわけでは決してないが、夏の暑さによってアイスが溶けてしまうスピードの方が、斎の食事スピードより速い。
普段は、食べ過ぎるとご飯が食べれなくなるからだとかお腹が冷えて体に悪いだとか、色々理由をつけてシングルしか買ってもらえないのだが、この某有名アイスクリームショップでは時折キャンペーンをやっており、今がその時期のようだ。せっかくだからとせがんで買ってもらった。その手前、やっぱり食べられませんでしたでは次に繋がらない。それに何より食べきれないのは悔しいので必死に救うのだが、やはりキングサイズはキングだった。でかい。
実はチョイスも少し失敗した。小さい方に、普段は選ばないものを選んでみたのだが、それが一口ごとに口の中でぱちぱちと弾けるのだ。美味しいと思うし嫌いではないが、いかんせん食すのに時間はかかる。
ここはやっぱり、あれだ。気付かれないように気をつけて手伝ってもらうのが一番だ。
「益荒。一口いるか?」
ここで益荒を選んだのは狭すぎる店内故に三人ではテーブル席が使えず長椅子に並んでいて、隣にいたのが益荒だったからに他ならない。そう言えば斎がつめて端っこに座った時、保護者二人が何やら言い合っていた気もするが、その時斎はカップのアイスをじっと見ていたため何の言い合いだったのかは知らない。
益荒は三秒間ほど斎とアイスを見比べたが、すぐにふと柔らかく笑って「では、いただきます」と頷いてくれた。よし成功、と思いつつキングサイズの抹茶の方を救い取ってスプーンを渡そうとして、阻まれた。
阿曇がやんわりとだが強く斎を制し、かと思いきやスプーンを受け取る体勢に入っていた益荒の手首を掴んだ。双方ともに力の入れすぎで手が軽く震えている。
「斎様、益荒はお気持ちだけで充分です。ゆっくりで構いませんからそのままお食べください」
「勝手なことを言うな、斎様は俺にくださろうとしているんだ、邪魔をするな」
「何を言っている馬鹿者、空気を読んで遠慮してしかるべきだろう」
「何の空気を読めと言っているんだお前は、お前こそ読め」
受け取り主のいなくなったスプーンをしばらく遊ばせていた斎は、アイスが溶けだしたのを見て仕方なくそれを自分の口に運んだ。
また始まった、と肩をすくめる。少し油断したらこの二人はいつもこうだ、一体何で突っかかり合っているのだか。仲がいいのは分かったから自分を置いて行かないで欲しい、と、口喧嘩の原因がほかならぬ斎自身であることなど想像だにしない彼女はのんきにそんなことを思うばかりだ。
その時、入口の自動ドアが開く。よく知っている二人――騰蛇と昌浩、そして彰子だった。ついてる、と避難がてらにアイスを持ってそぅと立ち上がり、彼らのもとへ行く。
「久しぶり、斎」
「うむ」
笑いかけてくる少年と違い、騰蛇が乾いた笑みを張りつかせていた。斎を見下ろした騰蛇は、分かっている、と言いたげに軽く頷いた。ちらと様子を窺うと、口喧嘩はヒートアップの一方のようで、斎が昌浩たちの下に行っていること――もしかしたら昌浩たちが入店したことも、気付いていないのかもしれない。
「平和だなぁ」
騰蛇がしみじみと呟いた。どういう意味だろう。
「…ね、斎ちゃん、あの二人はいいの?」
「……放っておけ。いつものことだ」
「…………いいの? それ」
昌浩が二人の方を覗っているが、彰子の質問にはそれしか答えられない。日常茶飯事すぎて今更止めようとも思わないのだ。斎が何か一言言えば終わるのだろうが、わざわざ口を挟むようなことではないように思う。
そうだ、と斎は少年少女を見上げた。
「一口いらぬか? …食べたかったのだが、少し大きい」
「あー、今度の原因はそれか」
騰蛇が納得したように呟いた。
「そうね、じゃあ、貰っていい?」
彰子が軽く屈んだ。スプーンを渡そうとして、デジャヴ。また阻まれた。しかも今度は二人がかりである。
いつの間に、と流石に目をぱちくりさせる斎を尻目に、阿曇がわけのわからない主張を始めた。「貴様ら人間風情が斎さまのアイスを食べるなど……!」
どういう意味だ。そう思っていたら騰蛇が溜め息を吐いた。
「お前ら、ちょっと流石に大人げなさすぎるぞ。俺らを巻き込むな。…………まぁ、斎も頑張って全部自分で食え。たぶんそれが一番早い」
騰蛇のアドバイスも理解は出来なかったが、確かにぎゃーぎゃー騒いでいるよりひとりで食べている方が早く食べ終わりそうなことに今更ながら気付いたので、彼の言には素直に従うことにした。よく見ればアイスは溶けかけて二つが混ざり合おうとしている。ちょっとそれはよろしくないかもしれない。「あ」と小さな声をあげて、斎は溶けかけのアイスをつっついた。
キングサイズのアイスクリームはキングの名を冠しているだけあって想像以上にボリュームがあった。プラス、キッズサイズと言えどもそこそこの大きさのアイスとのダブルだ。食べれないわけでは決してないが、夏の暑さによってアイスが溶けてしまうスピードの方が、斎の食事スピードより速い。
普段は、食べ過ぎるとご飯が食べれなくなるからだとかお腹が冷えて体に悪いだとか、色々理由をつけてシングルしか買ってもらえないのだが、この某有名アイスクリームショップでは時折キャンペーンをやっており、今がその時期のようだ。せっかくだからとせがんで買ってもらった。その手前、やっぱり食べられませんでしたでは次に繋がらない。それに何より食べきれないのは悔しいので必死に救うのだが、やはりキングサイズはキングだった。でかい。
実はチョイスも少し失敗した。小さい方に、普段は選ばないものを選んでみたのだが、それが一口ごとに口の中でぱちぱちと弾けるのだ。美味しいと思うし嫌いではないが、いかんせん食すのに時間はかかる。
ここはやっぱり、あれだ。気付かれないように気をつけて手伝ってもらうのが一番だ。
「益荒。一口いるか?」
ここで益荒を選んだのは狭すぎる店内故に三人ではテーブル席が使えず長椅子に並んでいて、隣にいたのが益荒だったからに他ならない。そう言えば斎がつめて端っこに座った時、保護者二人が何やら言い合っていた気もするが、その時斎はカップのアイスをじっと見ていたため何の言い合いだったのかは知らない。
益荒は三秒間ほど斎とアイスを見比べたが、すぐにふと柔らかく笑って「では、いただきます」と頷いてくれた。よし成功、と思いつつキングサイズの抹茶の方を救い取ってスプーンを渡そうとして、阻まれた。
阿曇がやんわりとだが強く斎を制し、かと思いきやスプーンを受け取る体勢に入っていた益荒の手首を掴んだ。双方ともに力の入れすぎで手が軽く震えている。
「斎様、益荒はお気持ちだけで充分です。ゆっくりで構いませんからそのままお食べください」
「勝手なことを言うな、斎様は俺にくださろうとしているんだ、邪魔をするな」
「何を言っている馬鹿者、空気を読んで遠慮してしかるべきだろう」
「何の空気を読めと言っているんだお前は、お前こそ読め」
受け取り主のいなくなったスプーンをしばらく遊ばせていた斎は、アイスが溶けだしたのを見て仕方なくそれを自分の口に運んだ。
また始まった、と肩をすくめる。少し油断したらこの二人はいつもこうだ、一体何で突っかかり合っているのだか。仲がいいのは分かったから自分を置いて行かないで欲しい、と、口喧嘩の原因がほかならぬ斎自身であることなど想像だにしない彼女はのんきにそんなことを思うばかりだ。
その時、入口の自動ドアが開く。よく知っている二人――騰蛇と昌浩、そして彰子だった。ついてる、と避難がてらにアイスを持ってそぅと立ち上がり、彼らのもとへ行く。
「久しぶり、斎」
「うむ」
笑いかけてくる少年と違い、騰蛇が乾いた笑みを張りつかせていた。斎を見下ろした騰蛇は、分かっている、と言いたげに軽く頷いた。ちらと様子を窺うと、口喧嘩はヒートアップの一方のようで、斎が昌浩たちの下に行っていること――もしかしたら昌浩たちが入店したことも、気付いていないのかもしれない。
「平和だなぁ」
騰蛇がしみじみと呟いた。どういう意味だろう。
「…ね、斎ちゃん、あの二人はいいの?」
「……放っておけ。いつものことだ」
「…………いいの? それ」
昌浩が二人の方を覗っているが、彰子の質問にはそれしか答えられない。日常茶飯事すぎて今更止めようとも思わないのだ。斎が何か一言言えば終わるのだろうが、わざわざ口を挟むようなことではないように思う。
そうだ、と斎は少年少女を見上げた。
「一口いらぬか? …食べたかったのだが、少し大きい」
「あー、今度の原因はそれか」
騰蛇が納得したように呟いた。
「そうね、じゃあ、貰っていい?」
彰子が軽く屈んだ。スプーンを渡そうとして、デジャヴ。また阻まれた。しかも今度は二人がかりである。
いつの間に、と流石に目をぱちくりさせる斎を尻目に、阿曇がわけのわからない主張を始めた。「貴様ら人間風情が斎さまのアイスを食べるなど……!」
どういう意味だ。そう思っていたら騰蛇が溜め息を吐いた。
「お前ら、ちょっと流石に大人げなさすぎるぞ。俺らを巻き込むな。…………まぁ、斎も頑張って全部自分で食え。たぶんそれが一番早い」
騰蛇のアドバイスも理解は出来なかったが、確かにぎゃーぎゃー騒いでいるよりひとりで食べている方が早く食べ終わりそうなことに今更ながら気付いたので、彼の言には素直に従うことにした。よく見ればアイスは溶けかけて二つが混ざり合おうとしている。ちょっとそれはよろしくないかもしれない。「あ」と小さな声をあげて、斎は溶けかけのアイスをつっついた。
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