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Windows98からこんばんは。
イマドキ98とか懐かしいにもほどがあります。我が家では10年選手です。こいつは今のところ無事のはず。

親が重要性を理解してくれませんorz
父さん電気屋もってってくれる言ってたのに出張行ってもーたorz
明日父さんが帰ってきたら数か月分の我儘使い切る感じで説得リトライです。いっそあれが私のパソコンなら話は早かったのに!






時々誰も望んでいないような新境地に萌えることがあります。
というわけで青后。というか目指したスタンスは后青。(まさかの)
積極的な天后さん書くのマジ楽しかった! 久々ににやにやしながら、時には萌えと恥ずかしさにベッドでのた打ち回りながらがーっと書きました。
ねぇ加月さん、こんな感じかなぁ。




 青龍は考えていた。いかにしてこの状況を脱するか、年中顔に張り付いている眉間の皺をさらに増やし深めて考えていた。もとより不機嫌そうなつくりのまま固まっている生真面目な顔が焦燥に歪むという悪夢的面白さは生じなかったが、彼は静かに慌てていた。目下の問題点からして山積みの状態である。当の彼女は口頭による説得が効くとは思われぬ様子であるし、これが彼女でなければ暴力的手段に訴えてでも引きはがすなり落としてしまうなり、容易に解決をはかれるのだが、いかんせん現実目の前にいるのは彼女であるので、反実仮想は反実仮想のままどうにもできない。取り敢えず全身の細胞が考えつく限りの選択肢を並べてたててみることにする。一、話を聞く。二、誰かが通りがかるのを待つ。三、何か事件のふりをして声を上げる。四、襲う。五、そもそもこれは夢である。六、後先のことは考えずひとまず落とす。七、三十六計逃げるに如かず。しかし逃げれないことが問題である。八、そう言えばいつかの白百合の季節になった。九、ところで勾陣はどこにいる、回収しに来い…………
 青龍は考えていた。生真面目な無表情の下で、至極真面目に考えていた。
 しかしながら、人はこれを『現実逃避』とも呼ぶ。

 酒を飲む機会というものは、多くもなければ少なくもない。晴明に依頼してきた貴族が礼にと持ってくることもあれば、主本人が普段の礼だと振る舞ってくれることもあり、またどこからともなく同胞が入手してくることもある。たいがいにおいて人界の人間による人間のための酒であるのだが、神酒を酌めることも少なからずある。
 青龍は酒が好きだ。酒豪と言うわけではないが、機会があれば嗜むくらい当然である。これは青龍のみならず十二神将に共通している。しかし青龍には同胞と共に和やかに酒を酌み交わすという文化はない。そんなことがあった日には、真夏だろうが霰(あられ)が降るか雹(ひょう)が降るか、いっそ豹が降ってきてもおかしくない。酒というのは一人心静かに味わうからこそ美味いのである。間違っても、たとえば太裳と共に飲んで酒のせいでなく頭を痛めるなど、頭上に煌々と輝く月の神に詫びようがないほど恐ろしい愚行は言語道断である。
 故に青龍はひとり、閑かな廊で杯を傾けていた。喉を滑り落ちる酒精はほの甘く、ぱっと乙女のほころぶ如くに芳醇で、腹に下ったのちも温かくもすんと通る余韻を残す。まこと上等の酒である。どういう経路で手に入れたのかは知らないが、そこは青龍の興味が及ぶ範囲ではない。今ささやかに幸福な時間を過ごせていることが大事なのだ。
 けれども至福は唐突に破られるからこそ価値あるものである。
「青龍」
 このとき適当な切り返しで逃げていればと思うのは今だからこそであるが、しかし後に『何か適当な切り返し』を海の底の果てよりも深く考えてみたところで何も思い浮かばなかったのだから、これはしても仕方のない後悔と言えよう。

 呼ばれて声の方を向けば天后だった。ひとときを邪魔された青龍はむっと眉を寄せたが、もともと眉の寄っている顔である、見たところ変化は一切現れなかった。何だ、と端的に問えば返事がない。ただ天后はじぃと青龍を見つめているだけだった。このとき彼女の異変に気付いていればと思うのは、やはり今だからこそである。
 天后が青龍の問いかけに答えないことは大変珍しいことで、だからだろうか、彼は理由も分からず余計にむっとした。
「天后」
 不機嫌を隠そうともせずそのまま声に乗せて呼ぶ。普段ならば彼女は捨てられかけた子犬のように謝りながら青龍を上目に伺ったろう。しかしここにいたってなお天后からの返事はない。声をかけてきたくせに、いったいどういうつもりなのか。元々大きくもない堪忍袋の尾はすでに擦り切れていて、彼は最後の温情措置のつもりで再び「天后」といささか語気を荒げた。
 さて、言い訳をしていいのなら、いくらか並び立てられる。彼の予想を遙かに超越した行動だったからとも言えるし、普段の彼女を思ってみてもあり得るはずのない行動だったからとも言えるし、天后が立っていて青龍が座っていたからとも言えるし、仮にも天后だって戦闘属性の神将であったからとも言える。並び立てたものの共通点を敢えて上げるとするならば、とどのつまり、油断していたのである。
 驚くべきことに、天后はいきなり至近距離を神速で移動したかと思いきや、あまりに突然の事態に青龍の頭が白くなった一瞬の隙をついて懐に入り込み、がっと彼の肩に手をかけたかと思うと、慣性を利用してそのまま彼を押し倒しかけた。先ほどまで青龍の手中にあった杯がかららんと音を立てて転がり、中の酒がこぼれて廊に吸い込まれる。寸前に後ろ手を付き、どうにか完全に押し倒されることを免れたのは、青龍の闘将としての本能や勘でしかない。何をすると言いかけたのだが、忌々しげに顔を歪めた天后が軽く舌打ちしたのが聞こえて喫驚のあまり言えなかった。流石の彼も目を見開いて呆然とした。彼の知る――いや、誰もが知る天后は、常に潔癖で生真面目ゆえに品行方正、己が意志ははっきり持っているものの若干控えめで、仲間内でもっとも人間らしくだからこそ極端なことはせず――間違っても、たとえ夢でも、襲いかかってきたり舌打ちをしたりする女ではない。やるとしたら親友の方だ。
 肩にかかる力は、青龍の腕力には遠く及ぶべくもなく、思い切り振り払えば簡単にのけれそうなのだが、いかんせん相手が相手である。再三「天后」と名を呼んでみても、彼女は返事もせず、ただじぃと、青龍を睨むかのように見つめてくるだけだ。しかも晴天に光る湖沼を写し取った双眸は熱っぽいを通り越して据わっており、ほのかに赤み走る頬もまた愛らしいを超越して迫力倍増の手助けとなっていた。
 そして冒頭に戻る。

 酔っているのだとすぐに分かった。彼女が以前、「お酒は少し、弱いと思う」なんて大変愛くるしく困ったように首を傾げていた姿も思い出した。しかしこれは弱いなんて騒ぎではない。弱いならただ弱いだけなら問題ないのだが、こんな極悪な酔い方をするなんて聞いていない。しかし、まぁ、他の男に絡みにいく酔い方よりは、比べる数値も気が遠くなるほど、ましなのだが――青龍にかかる心痛の重さはいずれぞ。
 誰か来い、と念じるが、特に来て欲しくないのが何人かいるので彼は早々に念じることを諦めた。太陰に見られたらあらぬ誤解をはらむ噂があっと言う間に流れそうだし、太裳の場合はこんな時でも話が成り立たず変に解釈されそうだし、まして勾陣の場合は、現時点での被害者は完璧に青龍であるはずなのに、青龍が全面的に悪いことにされ、戦闘を司る女神に相応しい微笑みを拝むことになるのは間違いない。その後の未来も想像がついて身震いがした。あの女に見つかるくらいなら自力でどうにかする方がよほど平和に解決する確率が高い。
 天后。口を開こうとしたとき、彼女はやっと声を上げた。

「貴方は分かっていない」
 流石にこれ以上予想を超えることは起きまい。そう高をくくっていた青龍の予想をこれまた見事に通り越す一言であった。
「どういう意味だ」
 口を開いたということは論争の余地は残されているということだ。静かに訪ね返すと、天后は据わった目を物騒に光らせて唇をぷくりと尖らせた。可愛いのかおっかないのか判断に困る表情である。
「ほら、分かっていない」
「答えろ天后。どういう意味だ」
「そういうところが、分かってないと言ってるんです」
 埒があかない。酔っぱらいの戯言だと思いたかったのだが、戯言と言うより本心、酒精の助けを借りて寝た子が起こされたと判じる方が確かそうだった。青龍は薄々、なにゆえ天后が勾陣ととりわけ仲がいいのか理解しつつあった。何もかも正反対のくせにと思っていたのだが、何のことはない、青龍の認識こそが赤を青と認識するほどおびただしい誤りであり、本質は二人揃ってそっくりなのである。しかも現状、理性が残っている様子もなさそうだからこっちの方が性質が悪い。
 小さく舌打ちをした、それがまずかった。苛立たしげにぴくりと片頬をひきつらせ、天后は青龍の肩に掛けた手にさらなる力を込めた。全体重をかけんとする勢いである。耐えながら青龍は息を吐いた。
「分かった、天后。質問を変えるぞ。何故俺が『分かっていない』と思ったんだ」
「はぐらかすつもり?」
「お前こそ。話が見えん。ひとりで納得してないで伝えろ」
 天后はしばし不服そうにもこもこと唇を動かしていたが、諦めたように重苦しいため息を吐いた。先ほどの青龍のものと比べると十倍以上重苦しいと思った。青龍はあまり気が長い方ではないし神経を逆撫でされたのは事実だったが、これ以上刺激しては自分の墓穴をざくざく喜んで掘り進めるようなものなので、文句は唾液とともに腹に下した。
「私は貴方が好きなのに」
 天后の返答はまるきり答えになっていない。しかし何となく話は見えた。だが打開策が全くもって分からないので事態は好転したとは言えない。
「そんなこと、知っている」
「嘘」
 湖沼が揺れる。揺れながら射抜く。これには青龍も言葉を失った。いつからかこっそりと自分たちの恋は自分たちも知らぬ間に成就していたことを互いに知っているはずだったし、しかしそんなものにうつつを抜かす性格は二人ともしていないということで意見の一致を見ていたつもりだったのだが、これは誤解か妄想の一種だったのだろうか?
 無表情の下で静かなる衝撃をやり過ごしている青龍の額に自分のそれをくっつけて、天后は再び「嘘」と言った。酒のせいか、彼女はひどく温かった。彼は慌てて天后を引きはがそうとしたが、彼女は相変わらず青龍に体重をかけてきているし、青龍の体勢と重心はまだ不安定なまま後ろ手で支えられている現状である。青龍の矜持にかけて言うが、彼がこんな間抜けな現状を甘んじて打開していないのはひとえに相手が天后だからである。天后でなければぶん殴って放っておくところなのだ。
 せめて妙な気分を沸き起こらせる額の感覚だけでもどうにかしようとするものの時すでに遅し、近すぎる距離は少なからず彼を動揺させ正常な思考力を刻一刻とあざ笑うように削っている。
 唇をかすめてから、天后はまた、
「貴方は、何も、分かっていない」
 と言った。そしてまたもや乱暴に押しつけてきた。酒の匂いが強く雪崩込んできたが不快ではなかった。皮膚が薄くてふっくらしているだけの部分が触れてくるだけで何故頭の中が白くなったり心地よくなったり変な感覚が押し寄せてきたりするのかさっぱり分からぬ。言語的回答を導き出せばこれは凄いことなのではと不毛すぎて雑草も育たない発想が体の中でぐるぐる回っているうちに、これまた唐突に彼女は離れた。ぱた、と青龍の頬が濡れた。真上から青龍を見下ろす体勢になっている天后が相変わらず物騒な目でぽろぽろ泣いていた。重力に任せて青龍の肌に触れる彼女の銀糸がさらさらとくすぐったかったが、そこに払う注意は生憎とどこかに遊びに行ってしまって留守だった。主の暴挙を止めるための常套句を青龍は何度も聞いてきているが、しかしどうして言葉が実行されたことは数少ない。涙は女の武器、を素で実行することを厭わぬくせに、彼女の涙は極めて希有なものなのである。だからこそ言葉に強い力が宿るわけではあるのだが――そして彼女の涙に弱いのは主や勾陣だけではないのである。いや、もしかしたら一番弱いのが青龍なのかもしれぬとすら我ながら思う。思考能力の欠片までごっそり取り去って消していくのは何の魔術なのか。これと相対するくらいなら騰蛇と共に任につく方がまだましかもしれない。
 最後のは流石に嘘である。
 とにかく青龍は天后の涙がことのほか苦手であった。
「貴方なんて」
 青龍の顔に落ちた滴を、額とは違い思いのほかひんやりと心地の良い指先で拭いながら、しかし聞いたこともないほど険しく不機嫌な調子で硬質な声音を時折掠らせ、彼女は言った。
「貴方みたいに分かりにくくて頑固で堅物で、優しい言葉も甘い言葉もくれないし眉間の皺もついたままだし笑ってもくれないし、笑われてもきもちわるいからいいんですけど、こっちのこと全然気遣ってくれないし気づいてくれないし構ってくれないし言葉だって選んでくれないし、ないないづくしの男なんて、これから先百年経っても千年経っても一万年経ってもまともに付き合って好きでい続けられる女なんて絶対私しかいないに決まってるんだから、もうちょっと気遣ってくれてもいいじゃない。もうちょっと大事にしてくれたっていいじゃない。騰蛇の方がまだましよ。勾陣は騰蛇にすごく大事にされてるのに。今だってやっぱり何にも分かってないし抱きしめてもくれない。私ばっかり貴方を好きみたいでばかみたいじゃない。だいっきらい。青龍なんて。これだけ不安にさせておいて何もしてくれなくて、なのに嫌いにさせてもくれないところがきらい。いっそいつか本当に私に嫌われておろおろすればいいのよ、無様な姿見ておもいっきり笑ってあげるわ。それが嫌ならもうちょっと一緒にいて。大事にして。ほんとに嫌いになっても、知らないんだから……!」
 最後にとりわけ語調を荒げ、そして突然、糸が切れて落ちるようにもたれ掛かってきた天后を、青龍は慌てて片腕に抱いた。この段になってようやく体勢を立て直す機会を得、彼は天后を前かがみにもたれ掛からせたまま座り直す。青龍の肩口に顎を乗せていた天后が小さく呟いた。「青龍の、ばか」
 そしてあろうことか、彼女はそのままとろとろと寝息を立て始めたのである。
「おい」
 ゆさゆさと揺すってみるが、んーとかうーとか、言語として破綻した音が耳元で聞こえてくるだけである。どうにか一度起きたと思ったら頬に唇を押し当ててまた夢路を行った。青龍の口角がひくりと吊り上がる。それは笑みなんて不気味で珍妙なものではなく、怒りかけて不毛さに気付き、文句を言う相手も撃沈して戻ってくる気配が皆無な故の、実に中途半端な表情だった。
「誰が『分かっていない』だ。分かっていないのはお前だろうが、天后」
 気遣え、と彼女は言う。大事にしろ、と彼女は言う。しかしこれ以上どうやって気遣い大事にしろと言うのだ。彼女の不満はどうあれ、青龍は可能な限り天后に意識を向けているつもりである。そりゃあ、最も目を光らせていなければならない相手が晴明であることは間違いないが、天后だって同じではないか。それどころか、青龍は晴明の次に天后を気にかけているにも関わらず、天后が晴明の次に気にかけているのは勾陣で、青龍はさらにその次だ。順番だけで言うのなら、もっと気遣え、は青龍の台詞であるべきなのだ。
 天后は自分が青龍に投げつけまくった言葉たちがことごとく自分に返っていくことを知らないのだろうか。言っていいのなら青龍だって言いたいことはあるのだ。たとえば、お前絶対俺より勾陣の方が好きだろう、とか。
 嫌いにさせてくれない? どっちがだ。酔った拍子に襲いかかってきてぽろぽろ泣きやがって挙げ句の果てに寝落ちした、その前に怒濤と浴びせかけた陳情はもはや脅迫と言ってしかるべきで、その内容たるや身勝手で我が儘で自分本位で自意識過剰、けれども恐ろしいことにしっかり脅迫として成り立っている。こんな面倒くさい女にこれだけ面倒くさいことをされて愛想の一つも尽かさせられなかったというのは驚異である。脅迫内容が致死量に愛らしいなどと反則もいいところだ。いっそ選択肢四を実行してやろうか。
「ばかなのもお前だ」
 自分で据え膳を用意しておいて最後の最後で『待て』だなんてむごすぎるだろうが。

 しばらく考えて、青龍は天后を異界に連れ帰った。
 あのままあの場所にいては誰かに発見されそうだったのと、泣き筋の残っている天后を勾陣に見られたら、誇張表現でも冗談でもなく、勾陣に殺されそうな気がしたからである。
 安倍邸と重なる部分から遠ざかり、おそらく同胞たちも来ないだろうと思われる位置の川瀬近くの岩場に陣取る。天后は、自分の膝を枕代わりに寝かせておくことにした。
 起きたときにせいぜい慌てふためけ。



◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆




 天后が目覚めたとき、青龍は手慰みに彼女の髪を撫でつけていた。ぼんやりしながら犬か猫のように身をよじった天后は、しかし青龍と目があった瞬間はっと飛び起きた。青龍が持ち前の反射神経を駆使して仰け反らなければ素晴らしい衝撃が互いの額あたりに訪れたことだろう。
 わたわたと辺りを見回しながら魚のように口を開閉させていた天后は、実にぎこちない動作で青龍を見、泣きそうな困惑顔で「おはよ…う、ございます……」とごくごく小さな声で言った。文句の一つでもつけてやろうと思っていた気がそがれて、青龍は息を一つ吐いた。それを天后は呆れのため息と取ったに違いない、肩を震わせ慄いてから「ごめんなさい!」と頭を下げた。そしておずおずと青龍の様子を伺っている。怯え気味にかしこまった小さな犬に見えて、余計力が抜けた。
「謝るな。別に怒っていない」
「あの、青龍…、私、昨日、何かしました!? だって覚えてるのは、勾陣とお酒飲んでて、美味しかったし楽しかったからつい飲み過ぎて、そこから記憶が……」
 逐一教えてやるのも意趣返しに悪くはないかと思ったが、これ以上とどめを刺すのも忍びないと思い、青龍は端的な事実だけを伝えた。「俺のところに来たかと思ったらそのまま寝た」真ん中を端所っただけで嘘ではない。その真ん中が大事だっただけだ。
「…じゃあ、よかった……。勾陣に、お前は酒癖が悪いって言われてたから、何かしてないか、本当心配で…」
 今度、勾陣に文句を言いにいこう。青龍は固く決意した。酒癖が悪いことが分かっているなら捕まえておけ。
 安堵したのか、天后はほぅと全身の力を抜き、青龍が背もたれにしていた岩に、青龍と同じようにもたれかかった。しばらく首や肩を回したり足の爪先をのばしていた天后は、ふと、「あ」と声を上げた。「そう言えば」
 青龍が視線をやると、天后はまったく毒のない無邪気な顔で最大級の暴言を吐いた。
「何か悪夢見ました。青龍にすごく大事にされてすごく優しくされて、すごくきもちわるかったです」
 彼は昨日のことを赤裸々に語らなかったことを後悔した。天后は時々太裳のように平気な顔で無茶を言う。本質的に勾陣で態度が時たま太裳とは、青龍にとってもっとも性質の悪い存在ということになるのではなかろうか。
 文句の一つもつけようと思ったが、あんまり清々しく言われたものだから逆に怒る気が出てこない。諦めたように天后へ向き直ったところ、「いつもより一本多くないですか?」なんてとぼけたことを言われながら眉間をぐりぐりされた。
 だから仕返しのように天后の額へ軽く指弾を送ったあとで、心の底からため息を吐き、青龍は天后から投げつけられた台詞をそのまま言った。

「お前は、何も、分かっていない」

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ここまでストーカーしてすいません(泣き笑い
でも思わず、お邪魔します><
サイトのウィルス大丈夫でしょうか??早く琉先輩(まだ言う)の話読みたいです。
やはり琉さん凄いですvv萌死にしそう(笑
私の理想の青后です、この話は。私ここまで分析出来ないorz
天后が酒癖悪いとこに吹きました。以前、私も酒弱い設定で書いたので、やっぱり皆様そう思われるんでしょうかv
青龍の打開策選択肢もツボりました。4と8…(笑

長々とすいませんでした!!失礼致します><
李姫 2010/06/07(Mon)17:09:59 編集
ビックリ
ビックリしました。チェックかけておきます。
取り急ぎ、サイト閉鎖はやめてくださいね。
せめて休止で。
帰ってくるの本当に待ってますから。

サイトやるのが難しそうなら、ノベリストとかどうですか?
最近サイトと両立している方見ますよ。
まだいろいろ不便らしいですが、もう少ししたら使いやすくなるんじゃないかな、と思ってます。

でわ、また来ます。
2010/06/07(Mon)23:09:03 編集
無題
ウイルス大丈夫ですか??
私のパソコンもチェックしときますね。

えと、私もついこないだまで受験生だったのでお気持ちもわかりますが、私的にはサイト閉鎖はやめてほしいなぁ~と思います・・。

あくまで私の意見ですけど、琉さまのサイトは見ていて本当に癒される感じなので、閉鎖されたらかなりショックなので(´・ω・`)


姉(高3)も今結構頑張っているので無理ではない程度にでもいいので…っ

我が儘すいません><
楡輝 2010/06/09(Wed)22:33:06 編集
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少年陰陽師・紅勾を中心に絶えず何かしら萌えor燃えている学生。
楽観主義者。突っ込み役。言葉選ばなさに定評がある。
ひとつに熱中すると他の事が目に入らない手につかない。

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