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Be praying. Be praying. Be praying.
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少年陰陽師・現代紅勾。
適当。時間ないごめんなさい。



ある意味では姐さんの願いは叶っていて、でも姐さんは、それは自分が願わなくてもそのうち叶ったことを分かってるから、自分の願いは叶っていないと思ってる……んだと思う(←

「あー、やっぱりリタイアか」
 縁側にこてんと寝転がり、ぐっすりと眠っている子供を一目見て、紅蓮はやれやれと言った様子で軽く笑った。
「まぁ、頑張った方だろう」
 応じた勾陣もくすくすと笑う。ほほえましい視線を一身に受ける五歳児はそんなことなど露知らず、気持ちよく夢の中だ。
 風邪を引くから、と紅蓮は昌浩を抱き上げて寝室に連れて行く。最近は日中でも随分と冷え込み、朝夕となれば肌寒いなど悠長なことを言っていられる気候ではない。ゆるゆると絶えず吹く風は既に刺すような冷たさを孕んでおり、昌浩はそれに応じてばっちりと防寒のために着込んでいた。
「何か飲むか?」
 背中から声だけが降った。
「まかせる」
 肩越しに軽く振りかえり答える。
 リクエストはせずともコーヒーが飲みたいと思ったことくらい紅蓮なら分かってくれている。




 ブラックコーヒーのたっぷりと入ったマグカップから指先に伝わる熱をじんわりと感じつつ、勾陣はぼうと空を見上げていた。隣に座る男も同じようにマグカップを持って、同じように空を見ている。時折流れる星を見つけるたびに小さな声がどちらからともなく上がり、たまに重なった。
 しし座流星群――数ある流星群の中でも、もっともポピュラーなものだろう。どこからかその情報を仕入れてきた昌浩が「流れ星見たい!」と騒いだので紅蓮と勾陣がそれに付き合っていたのだが、五歳児の夜更かしには限界がある。現代より余程美しい星空を二人とも知っているし、もう付き合うべき相手もいないのだからさっさと寝てもいいのだが、せっかくだから、と二人で星見と決め込んだ。今年はさして大量には流れないものの、時折白い光が筋を引いて消えていく様は素直に綺麗だと思う。
「そう言えば、昌浩が『流れ星が消える前に三回願いを唱えたら叶う』を実行していたぞ。出来ていなかったが」
 ちなみに唱えていた内容はグレンジャーがどうこうといったいかにもな子供の夢である。
「あの一瞬で三回言える奴のほうが少ないだろう」
 ただでさえまだ幼児の域を出ない昌浩の呂律は若干怪しく、話し方もこの年頃の子供らしくゆっくりである。早口言葉よろしく三回も唱えることなどまず出来まい。
「まず出来ないからそんな話が広まるんだろう。その程度で願いが叶うんだったらもう少し平和だろうな」
 私たちと安倍の陰陽師が、そう付け足した勾陣の隣で、紅蓮はさして気にした風でもなくけれど軽く苦笑する。
「夢がないな」
「何千年と生きて、流石に子供の夢をそのままは信じれまい?」
「そりゃそうだ」
 マグカップに唇をつける。熱が触れ、じんわりと肌に移った。一口飲むと仄かな苦みと共に温かいものが喉元を滑り落ちた。


 流れる星に願いを重ねてみたところで叶うわけがない。勾陣はそれを知っている。
 紅蓮は知らない。誰も知らない。誰にも知られず一人きりで星空の下願っていた。確かにささやかに強く強く――あの優しい魂に安息があるようにと。現代では常識のように語られる拙い夢物語を知る前からずっとずっと、勾陣は瞼の裏に紅蓮を浮かべて願っていた。
 願いは確かに叶った。今、隣に座る紅蓮は穏やかで、何かのきっかけがない限り、少なくとも勾陣に見えるほどに彼が過去に苛まれることもなく。けれどもそこに勾陣の願いなど一欠けらも関係してはいないのだ。
 彼を癒したのは真っ直ぐに過ぎるほど真っ直ぐな生を連綿と紡いでいく安倍の人間たちで、彼の過去を遠くしたのは静かに降り積もり続けた悠久で、彼女はただ、その横にいただけだ。
 彼の横で寄り添うことも出来ず、自分の願いが自分以外の要因で叶えられていたのをずっと見ていた。

 星にかけられた願いなど叶わない。勾陣はそれを知っている。
 悠久の時にたゆたううちにいつの間にか叶えられた願いに勾陣の意志などどこにも入っていない。
 それでも。
「騰蛇」
 いつの間にか空になったマグカップを紅蓮に突きつける。ちらりと横目で窺うと、一瞬目を見開いた紅蓮はすぐに彼女の意を理解し、しかし何か言いたいことがあるのか複雑な表情を浮かべたが、それもつかの間、はいはいとおざなりに笑声を含む生返事をしながら勾陣の手からマグカップを受け取り、腰を浮かした。
 台所に消えていく紅蓮の横顔を盗み見ると、案の定呆れ気味に笑っている。

 それでも彼は今の穏やかな日々を知っているから。
 それだけで充分だと、彼女は思うのだ。

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碧波 琉(あおば りゅう)
少年陰陽師・紅勾を中心に絶えず何かしら萌えor燃えている学生。
楽観主義者。突っ込み役。言葉選ばなさに定評がある。
ひとつに熱中すると他の事が目に入らない手につかない。

今萌えてるもの
・紅勾、青后、勾+后(@少年陰陽師)

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