Be praying. Be praying. Be praying.
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ただそれを言葉に出して認めるのが癪なだけ。
少年陰陽師、パラレル紅勾。むしろ勾+后で天后優位な恋バナ。
イメージ的に蒼月後日談のその後。くっついた後はへたれで不器用で一生懸命な男と普段はしっかり者で凛々しいのに恋愛ごとに関してだけ不慣れでどうしようもなく不器用で時々ぽろっと可愛いことするような女の、どこにでもあるような幸せカップルなんだと思います。天后は応援要員。
たぶんこの後マジで指輪触ることが癖の一つになるんでしょう。
どうでもいいけど既に作品に無理矢理お題を合わせてる形になってる件。
少年陰陽師、パラレル紅勾。むしろ勾+后で天后優位な恋バナ。
イメージ的に蒼月後日談のその後。くっついた後はへたれで不器用で一生懸命な男と普段はしっかり者で凛々しいのに恋愛ごとに関してだけ不慣れでどうしようもなく不器用で時々ぽろっと可愛いことするような女の、どこにでもあるような幸せカップルなんだと思います。天后は応援要員。
たぶんこの後マジで指輪触ることが癖の一つになるんでしょう。
どうでもいいけど既に作品に無理矢理お題を合わせてる形になってる件。
最近互いにスケジュールが合わず、二人で話すのは久々だった。顔を合わせば二言三言くらいは話していたが、じっくり話す機会はなかったのだ。チェーンのカフェテリアの一角に陣取り、近況報告から入って、いつもと同じように他愛のない話で盛り上がる。「今度会ったら話そう」と思っていた種も一段落し、自然に口数が減ったところで「そう言えば」と天后が口を開いた。
「どうしたの? それ」
疑問形で尋ねながら、彼女は軽く笑いにこにこと勾陣の答えを待っている。指差されたのはティーカップを持つ左手だ。いや、正しくはそこで輝く銀色。
一瞬言葉に詰まった。
「安倍さん?」
そして天后は疑問の形を取りながらの確認を続けた。分かっているくせに、と親友のからかいに少しだけむっとしながら「あぁ」と頷く。
「この間、急に。誕生日でもイベントでも、まして記念日だったわけでもないんだが」
そもそも勾陣は記念日など考えたこともない。……むしろ、会った日だとか、付き合いだした日だとか、そんなものを把握していない。季節やその場の空気をなんとなく覚えているだけである。初めて会った日など思い出したくとも思い出せないくらいだ。気付けば「そう言えばあの人はよくこの喫茶店にいる」と考えていた。記念日に煩い女子も多いと言うが、彼女らのパワーには舌を巻くばかりである。
「それ、もしかして、貴方がフリー対象として見られるのが嫌、とか言っていなかった?」
「……どうして分かった?」
「青龍が前同じようなこと言っていたから。男の人ってそういうものなのかしら」
カップに僅かに残った紅茶を飲み干しながら、勾陣はこの話題が早く過ぎ去ってくれることを内心願った。勾陣が恋愛関係に疎いことも不器用なことも天后は既に知っていて、だから時々こっちの様子を尋ねてくる。話の主導権は天后に握られっぱなしで少々居心地が悪い。
天后の言うとおりに、渡した後で騰蛇は「虫除けだ、むしろ魔除けだ」と言っていた。勾陣の周りの男たちを虫どころか魔物扱いしていることが妙におかしくてその言いぐさに笑った。――その後に続いた言葉には驚き固まってしまったけれど。
思い出して、勾陣は僅かに目元を染めた。だからこういう系統の話は苦手だ。
「貰ったはいいが、慣れなくて困る」
「付けてて違和感ってこと? そう言えばアクセサリー付けてるところ殆ど見ないものね。ブレスレットくらいかしら、貴方の使ってるやつ。あと時々アンクレット?」
「まぁ、それくらいなら。だがネックレスは肩がこるしピアスは穴を開けていないし、指輪も日常生活の邪魔になりそうだからあまり好きじゃない。店で見るのは好きだがな」
「あぁ、だからいじってるのね」
言われたことが分からなかった。いじっている? 私が? 何を?
天后は勾陣の戸惑いを即座に読み取り、意外そうに目を丸くした。
「……気付いていなかったの?」
「何を」
天后の仕草にも声音にも嫌味な部分はなかったが、なんとなく面白くない予感がしたので自然声が固くなる。
「結構頻繁に指輪触ってるわよ?」
そして天后の指摘はやっぱり面白くなかった。
「……嘘を言うな」
「嘘じゃないわよ。本当。無意識だったのね」
天后は面白そうにくすくすと笑うが、勾陣としては本当に面白くない。だってそんな、慣れず違和感を覚えているからならまだしも、無意識だんて――まるで私が彼に依存しているような。
あまりからかいすぎると勾陣が頑なになっていくことを知っているために天后はそれ以上突っ込んでは来なかった。それがまた面白くない。どうして自分はこんなにこの友人に弱いのだろう。
「それはそうと、お前の方はどうなんだ」
「私?」
「この間軽く言い争ったと言っていただろう」
「それはあの人がいらんこと言いだから!」
言い訳のように軽く声を荒げた天后に、勾陣は仕返しとばかりにっと笑った。
友人にゼミのことで相談があると呼び出されたからと詫びを入れながら天后が席を立っても勾陣はそこに腰を落ちつけていた。頼みなおした紅茶と、ついでに頼んだスコーンを齧りながら携帯をいじる。
午前中に、今日そっちに行きたい、と騰蛇にメールを送った。天后との話を優先して放っておいた返信の作成中である。何か食べたいものはあるかと聞かれた。今からリクエストして間に合うのだろうかと時計を見つつ、いくつか候補を思い描く。奴のレパートリーは煮込みと炒め物に偏っているから考える方も一苦労だ。二手間以上かけるのが面倒で、今まで料理など自分のためだけにしていたからスキルは上達しなかったという。
我が儘を言ってみたらどうするだろう。凝った和食などとなったら流石にハードルが高いだろうが。
最近寒くなってきたし、鍋でいいか。
送信。何をするでもなく椅子に背凭れて着信を待つ。
返信は早かった。雑踏にまぎれそうな騰蛇用の個別着信音に携帯に手をのばそうとして――そして、自分の右手が左手薬指の付近にあったことを知る。
結構頻繁に指輪触ってるわよ?
天后の言葉はまごうことなき事実だったということだ。
そして鮮明に思い出すことがある。これをもらった時のことだ。虫除けだ、魔除けだと顔を背けて誤魔化すように言った後で、あろうことか「後、予約だな」と言ったのである、あの男は。それがどういう意味か分からない程馬鹿ではない。
まるで呪いだ。強制的に意識を向けさせこちらの平静を崩す。決して嫌なものではないから振りほどこうと思わず――振りほどきたく、なく。
違う、これは違う。天后が暗に示してきた面白くない意味などあるわけがない。ましてそれが癖になりかけているなんてさらに面白くない事実など。ただ、そう、ただ付け慣れない指輪に、無意識下の違和感があるだけで、だからつい手が行くのだ。それだけ。それだけだ。
「……それだけだ」
聞く者などいないと分かっているのに言い訳じみた呟きを落とし、勾陣は今度こそ携帯を手に取った。
「どうしたの? それ」
疑問形で尋ねながら、彼女は軽く笑いにこにこと勾陣の答えを待っている。指差されたのはティーカップを持つ左手だ。いや、正しくはそこで輝く銀色。
一瞬言葉に詰まった。
「安倍さん?」
そして天后は疑問の形を取りながらの確認を続けた。分かっているくせに、と親友のからかいに少しだけむっとしながら「あぁ」と頷く。
「この間、急に。誕生日でもイベントでも、まして記念日だったわけでもないんだが」
そもそも勾陣は記念日など考えたこともない。……むしろ、会った日だとか、付き合いだした日だとか、そんなものを把握していない。季節やその場の空気をなんとなく覚えているだけである。初めて会った日など思い出したくとも思い出せないくらいだ。気付けば「そう言えばあの人はよくこの喫茶店にいる」と考えていた。記念日に煩い女子も多いと言うが、彼女らのパワーには舌を巻くばかりである。
「それ、もしかして、貴方がフリー対象として見られるのが嫌、とか言っていなかった?」
「……どうして分かった?」
「青龍が前同じようなこと言っていたから。男の人ってそういうものなのかしら」
カップに僅かに残った紅茶を飲み干しながら、勾陣はこの話題が早く過ぎ去ってくれることを内心願った。勾陣が恋愛関係に疎いことも不器用なことも天后は既に知っていて、だから時々こっちの様子を尋ねてくる。話の主導権は天后に握られっぱなしで少々居心地が悪い。
天后の言うとおりに、渡した後で騰蛇は「虫除けだ、むしろ魔除けだ」と言っていた。勾陣の周りの男たちを虫どころか魔物扱いしていることが妙におかしくてその言いぐさに笑った。――その後に続いた言葉には驚き固まってしまったけれど。
思い出して、勾陣は僅かに目元を染めた。だからこういう系統の話は苦手だ。
「貰ったはいいが、慣れなくて困る」
「付けてて違和感ってこと? そう言えばアクセサリー付けてるところ殆ど見ないものね。ブレスレットくらいかしら、貴方の使ってるやつ。あと時々アンクレット?」
「まぁ、それくらいなら。だがネックレスは肩がこるしピアスは穴を開けていないし、指輪も日常生活の邪魔になりそうだからあまり好きじゃない。店で見るのは好きだがな」
「あぁ、だからいじってるのね」
言われたことが分からなかった。いじっている? 私が? 何を?
天后は勾陣の戸惑いを即座に読み取り、意外そうに目を丸くした。
「……気付いていなかったの?」
「何を」
天后の仕草にも声音にも嫌味な部分はなかったが、なんとなく面白くない予感がしたので自然声が固くなる。
「結構頻繁に指輪触ってるわよ?」
そして天后の指摘はやっぱり面白くなかった。
「……嘘を言うな」
「嘘じゃないわよ。本当。無意識だったのね」
天后は面白そうにくすくすと笑うが、勾陣としては本当に面白くない。だってそんな、慣れず違和感を覚えているからならまだしも、無意識だんて――まるで私が彼に依存しているような。
あまりからかいすぎると勾陣が頑なになっていくことを知っているために天后はそれ以上突っ込んでは来なかった。それがまた面白くない。どうして自分はこんなにこの友人に弱いのだろう。
「それはそうと、お前の方はどうなんだ」
「私?」
「この間軽く言い争ったと言っていただろう」
「それはあの人がいらんこと言いだから!」
言い訳のように軽く声を荒げた天后に、勾陣は仕返しとばかりにっと笑った。
友人にゼミのことで相談があると呼び出されたからと詫びを入れながら天后が席を立っても勾陣はそこに腰を落ちつけていた。頼みなおした紅茶と、ついでに頼んだスコーンを齧りながら携帯をいじる。
午前中に、今日そっちに行きたい、と騰蛇にメールを送った。天后との話を優先して放っておいた返信の作成中である。何か食べたいものはあるかと聞かれた。今からリクエストして間に合うのだろうかと時計を見つつ、いくつか候補を思い描く。奴のレパートリーは煮込みと炒め物に偏っているから考える方も一苦労だ。二手間以上かけるのが面倒で、今まで料理など自分のためだけにしていたからスキルは上達しなかったという。
我が儘を言ってみたらどうするだろう。凝った和食などとなったら流石にハードルが高いだろうが。
最近寒くなってきたし、鍋でいいか。
送信。何をするでもなく椅子に背凭れて着信を待つ。
返信は早かった。雑踏にまぎれそうな騰蛇用の個別着信音に携帯に手をのばそうとして――そして、自分の右手が左手薬指の付近にあったことを知る。
結構頻繁に指輪触ってるわよ?
天后の言葉はまごうことなき事実だったということだ。
そして鮮明に思い出すことがある。これをもらった時のことだ。虫除けだ、魔除けだと顔を背けて誤魔化すように言った後で、あろうことか「後、予約だな」と言ったのである、あの男は。それがどういう意味か分からない程馬鹿ではない。
まるで呪いだ。強制的に意識を向けさせこちらの平静を崩す。決して嫌なものではないから振りほどこうと思わず――振りほどきたく、なく。
違う、これは違う。天后が暗に示してきた面白くない意味などあるわけがない。ましてそれが癖になりかけているなんてさらに面白くない事実など。ただ、そう、ただ付け慣れない指輪に、無意識下の違和感があるだけで、だからつい手が行くのだ。それだけ。それだけだ。
「……それだけだ」
聞く者などいないと分かっているのに言い訳じみた呟きを落とし、勾陣は今度こそ携帯を手に取った。
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